日米貿易協定承認案が衆院通過 懸念される第2弾交渉での数量規制
衆院本会議で日米貿易協定の承認案が可決し、与党側は12月9日の会期末までの参院承認、来年1月1日からの発効を目指す。写真は米フロリダ州で昨年4月撮影(2018年 ロイター/Kevin Lamarque)
衆院本会議で日米貿易協定の承認案が可決し、与党側は12月9日の会期末までの参院承認、来年1月1日からの発効を目指す。今後は米国による自動車・部品関税の扱いが焦点になるほか、米国側は将来的にはサービス分野も含めた広範な自由貿易協定(FTA)締結を目指しており、交渉再開の時期や内容も注目される。
交渉再開に向けて思惑が交錯
発効後を見据えて、問題となるのは日米交渉第2弾の時期だ。9月の日米首脳会談の際にはライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、来年日米で再交渉の対象分野を議論する方針を明らかにしている。米国側には金融、保険分野などに加えて、「農業分野でも乳製品などを議論したい」(交渉関係筋)との意見がある。日本側は米国への自動車および部品の関税引き下げを議論したいとの立場だが、「下手に再交渉すると数量規制を蒸し返されるリスクがある」(政府関係者)として、交渉に慎重な声もある。また第2弾での交渉が合意されても発効は米大統領選後となるため、現時点でトランプ政権内での優先順位は高くないとの憶測も聞かれる。
これまで米国は対米貿易赤字の削減を交渉の目標に掲げ、貿易赤字の最大の要因である自動車について米国現地生産拡大と日本からの輸出削減を求めてきたが、交渉関係筋によると「8月末のフランスでの日米首脳会談で、安倍晋三首相が米国からのトウモロコシ大量購入を提言した効果があった」という。
ある与党関係者によると「米下院がトランプ大統領の弾劾調査を進め始め、トランプ政権として、米国内でも異論のある、金融市場を下押しするような激しい保護貿易政策を採りにくくなったのも一因だ」と解説する。
もっとも、環太平洋連携協定(TPP)には盛り込まれていた日本から米国に輸出される自動車や部品に対する関税の撤廃が除外されたため、日米の貿易量に占める関税撤廃率が小さく、撤廃率9割を目安とする世界貿易機関(WTO)のルールに違反すると野党は批判している。
政府は10月、日米貿易協定が発効すれば国内総生産を0.8%底上げするとの試算を公表しているが、試算では米国の自動車・部品関税の撤廃を前提としている。