最新記事

世界経済

止まらぬ原油安、株安の追い打ちで膨らむリセッション懸念

2016年1月22日(金)11時54分

 その一方で、経済が低調で先の読めない時期に石油価格が非常に低くなると、どのような悪影響があるのか、ということは分かりにくい。

 だがアナリストらは、企業はコスト削減分を投資に回さず、消費者も節約分を消費拡大ではなく債務返済に充てることを選んでいる、と指摘する。

 「燃料価格の低下が、企業・家計の支出増大に回っているという証拠は、これまでのところほとんど見られない」と語るのは、NNインベストメント・パートナーズ(ブリュッセル)で上級ポートフォリオマネジャーを務めるロバート・デービス氏。

 「むしろ、家計は用心深く燃料費の節約分を債務の返済に回しているように見える。すると、燃料価格の低下は消費ブームを支えるのではなく、単にデフレをもたらすということになる」と同氏は語る。

 さらに、石油価格の低迷が長引いているせいで、石油会社では膨大な評価損が発生しており、エネルギー関連企業の破綻が生じた場合の連鎖的な悪影響への懸念も提起されている。

原油と株の同時安

 原油価格とアジアの主要株式市場のトレンドを少し見てみよう。

 2007年と2008年に原油価格が137%上昇すると、アジア地域におけるコモディティ輸入国である韓国、日本、香港の株価指数は、32%─58%下落した。

 その後、2014年6月から2015年4月にかけてブレント原油が45%下落すると、日本、韓国、香港の株価は10─19%上昇した。

 オーストラリアやマレーシアなどコモディティ輸出国を含む、より範囲の広い株価指数であるMSCI(日本を除くアジア太平洋株指数)は、5.3%上昇している。

 だが2015年末以降、原油価格と株価は同じ方向で推移している。石油価格がほぼ40%下落して1バレル29ドル以下になるとともに、日経平均、香港ハンセン指数、韓国の総合株価指数はいずれも9─14%下落した。

 これら3つの指数は現在、ブレント原油と約85─90%の相関を示している。

材料は燃え尽きたか

 投資家の株式市場からの撤退の副産物としてドルが強力に買われ、ドルの主要6通貨に対するドル指数は過去3カ月で4.4%上昇した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中