止まらぬ原油安、株安の追い打ちで膨らむリセッション懸念
かつて企業のコスト削減、消費者の家計節約と歓迎された原油価格低下が、今ではデフレ要因と見なされる
1月19日、原油価格はもはや、世界の株式市場にとって、ありがた迷惑な水準まで下がっている。どちらの市場も年初来暴落しており、投資家は1バレル30ドルを割り込んだ原油安がもたらすデフレ効果に警戒感を強めている。写真は13日、ニューヨーク証券取引所のトレーダー(2016年 ロイター/Brendan McDermid)
原油価格はもはや、世界の株式市場にとって、ありがた迷惑な水準まで下がっている。どちらの市場も年初来暴落しており、投資家は1バレル30ドルを割り込んだ原油安がもたらすデフレ効果に警戒感を強めている。
この1年半、下降スパイラルに陥った原油価格は75%も値を下げた。そればかりか、昨年末に一段と下落したことにより、今度は株式相場まで巻き添えにしてしまった。
「原油輸入国にとって、1バレル28ドルは素晴らしいニュースだ」と、オールド・ミューチュアル・グローバル・インベスターズ(香港)のアジア株統括、ジョシュ・ クラブ氏は語る。
「だが短期的には、センチメントにひどく影響する。つまり、原油安はインフレ面で(低下を招くため)よくない、ということだ。経済にとって非常に多くの問題を生み出している」と同氏は指摘。
これまで株式市場では、燃料価格の低下は好材料と見られていたが、2016年の市場が悲惨なスタートを迎えるなかで、世界的リセッション(景気後退)の危険性についての悪い噂が浮上してきた。
「コモディティ価格が総崩れになったのは、ちょっとした需給のアンバランスが原因ではない。それは、世界経済が成長軌道に戻っておらず、リセッションに危険なほど近づいている可能性があるとの考えに基づいている」と、香港の投資リスク管理会社アクシオマでアジア太平洋地域担当のマネージングディレクターを務めるオリビエ・ダシエ氏は説明する。
米国の景気回復には時間がかかっており、米国企業は2015年第4・四半期に収益のリセッションに陥った可能性がある。
世界第2の経済大国である中国は、この25年間で最低の成長率を記録したばかりであり、アナリストの予測では2016年はさらに減速すると見られている。
世界第3位の日本は、たえずリセッションにつきまとわれており、日銀の2%というインフレ目標の達成も依然として遠い先である。
かつての朗報が悲報に
原油価格低下の恩恵は明らかだ。企業にとってはコスト削減に、消費者にとっては家計の節約になる。