コストゼロ&シェアの時代のマネタイズ戦略
人工知能やIoTなどのイノベーションにより、これから10年で実現する社会変革を生き抜くビジネスモデルとは?
領域を広げる共有圏 これからの時代、身の回りのあらゆるものが共有の対象となっていく(『ビジネスモデル2025』より)
これからの10年で、コストはゼロに近づいていく。人工知能、モノのインターネット(IoT)、クラウドファンディング、デジタルファブリケーション(デジタルデータを3Dプリンタなどのデジタル機器によってモノへと作り上げる技術)等の普及によって、在庫コスト、物流コスト、限界コスト、取引コストが大幅に削減されていく。これを私は「コストゼロ社会」と呼んでいる。
更に、そのトレンドから鮮明に映し出されてきているのが「シェアリングエコノミー」である。あらゆるものを「共有する」という概念の中で広がっていく経済圏のことであり、民泊仲介サービス「Airbnb」やタクシー配車サービス「Uber」の拡大はまさにその象徴的事例である。
私は、世界の次世代ビジネストレンドを常にウォッチするイノベーションリサーチャーであり、それを元に経営や事業開発におけるコンサルティングを行っている。これからの社会とビジネスモデルがどうなっていくかという予測を記し、最近上梓した『ビジネスモデル2025』(ソシム)はおかげさまで好評をいただいている。
そこにも記したが、上記は、共有できるものを価格帯と日常性の軸で4つに分けた図である。比較的安くて日常的に使うもの、また自分がどうしてもそばに置いておきたいお気に入りの商品だけは、相変わらず旧来の概念である「所有」を続けていくが、一方でそれ以外のものは、ほとんどが共有の対象になる可能性がある。
拙著では、このコストゼロ社会とシェアリングエコノミーが広がる中で、重要となるビジネスモデルを7つご紹介した。
例えば、人の代わりに警備をするロボットや、ペンで手書きの手紙を代わりに書いてくれるロボットが活躍する「ロボットの継続課金モデル」。あるいは、労働集約的なクラウドソーシングを超え、仕事を単にマッチングするだけでないゼロからの事業創造が行われる「クラウドソーシング利用モデル」。また、モノが情報として流通する時代、家具のデジタルデータや住宅の設計図がオープンプラットフォームで共有され、それらを元に各地で個人と地域が活かされていく「新たなサプライチェーン」が登場し、世界を席巻していくことについても書かせていただいた。
「買う」は消費概念のごく一部になる
これらのビジネスモデルに注目したい理由の1つは、「消費」の概念が進化するからである。下記は21世紀の消費の概念を記した「価値消費ピラミッド」だ。これからの消費は、これまでの一般的な「買う」という概念だけでは説明できなくなる。つまり21世紀の消費概念は進化し、「買う」という行為は氷山の一角となるのだ。