「親より良い生活はできない」日本に求められる新しい人生観
30代男性の6割以上が「父親の若い頃より自分の地位は低い」と感じている
先進国では概して将来への展望は暗いが、その中でも日本は突出している Ocus Focus-BIGSTOCK
人間は加齢とともに成長してやがて老いるが、それは社会にもあてはまる。このアナロジー(類推)で言えば、日本はすでに老いを迎えた社会だ。経済発展(成長)の山はとうに越え、これから先は縮小するだけ。このような見通しは、人々の将来の展望にも反映され、「これから先、生活は悪くなる」と考える人が増えてきている。
子どもの将来を悲観する人も多い。アメリカの調査機関ピュー研究所が2014年に実施した国際意識調査では、「子どもの将来の暮らし向きは、親世代よりも良くなるか、それとも悪くなるか」と尋ねている。これに対する日本人の回答を見ると、79%が「悪くなる」と答え、「良くなる」は14%しかいない(残りは「同じようなもの」、「分からない」)。
まさに「希望が持てない社会」だ。しかしこうした傾向は万国共通ではなく、上記の設問への回答は社会によって大きく異なる。下の<図1>は、横軸に「良くなる」、縦軸に「悪くなる」の回答比率をとった座標上に、調査対象の44カ国を配置したものだ。
きれいなクラスターに分かれている。希望が持てる社会と、そうでない社会。日本や欧米諸国は後者だ。発展を遂げた後、将来の見通しは悪くなる一方という、先進国の悲哀が感じられる。
対極の右下には、今後も発展が望める途上国が多く位置している。昨今の経済発展が著しい中国やインドネシアも、この中に含まれている。上図の配置には,それぞれの社会の位置付けが如実に表れている。日本も高度経済成長期の頃は右下にあったのだろうが、現在では左上にシフトしてしまっている。
各国の位置は、高齢化のレベルとも関連が深い。日本では少子高齢化が急速に進行し、将来の現役層の負担が大きくなることが見込まれている。子どもの将来を悲観する人が多いのも無理からぬことだ。イタリアやギリシャも同様の事情を抱えている。