最新記事

世界経済

銅の下落に世界の投資家が注目する訳

2014年4月9日(水)15時38分
マイケル・モラン

 この2つの要因が重なったことで投資家たちの銅離れが加速し、今ではさまざまな形で大きな影響が出ている。まずはグレンコア・エクストラータやBHPビリトンなどといった鉱業大手への影響がある。

 銅価格の下落によってこうした企業の株価が下落し、採鉱計画も見直しを迫られるようになると考えられる。そうなると次に来るのは人員削減だ。

 最近、これまで米鉱山会社フリーポート・マクモランの業績見通しを高く評価していたモルガン・スタンレーが、その見通しにあらためて自信を示す発表を行った。だがこれは銅ではなく、金価格の上昇を見越してのもの。金価格は一般的に、経済状況が悪いときほど価格が上がるようになっている。

 とりわけ厳しい状況に陥りそうなのは銅産出国のチリだ。世界最大の銅生産企業である国営のコデルコは、チリのGDPの約10%を稼ぎ出す。銅の下落が続けば、チリ経済全体に深い傷が付くのは避けられない。既にコデルコは政府に対し、施設の改修のため10億ドル規模の公的資金注入を求めている。

 チリほどではないにしろ、ペルーやメキシコ、オーストラリア、インドネシアなども銅下落の影響を受けるだろう。

 一見すると私たちの生活にあまり関係なさそうだが、実は銅は世界経済にとってこれほどにも重要な存在だ。その価格変動は、巡り巡って私たちの生活にも大きく関わってくる。

From GlobalPost.com特約

[2014年4月 8日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 4
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 5
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 6
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中