ハフィントン流最強ニュースサイトの作り方
編集者はグーグルの人気検索キーワードを常に確認している。腕の見せ所は、人気の検索語の検索結果の上位にハフィントンの記事が表示されるよう記事を作ること。これは「検索エンジン最適化」と呼ばれる裏技で、ハフィントンの得意とする分野だ。
アリアーナは技術の重要性を認めながらも、「人間による編集に勝るものはない」と強調する。彼女はハフィントンの独自記事に誇りを持ち、成功したのは最初から情熱と独自の視点でニュースを追い掛けてきたからだと語る。
中立で不偏不党だというふりなどしなかった。「私たちは立場を明確にしている。例えばアフガニスタン戦争なら、これは不必要な戦争だと言い続けてきた」と、アリアーナは言う。「編集者が自分の情熱に従う、それがすべてだ」
最も驚異的なのは、読者からのコメントの数だろう。ハフィントンでは1つの記事に5000件以上のコメントが集まることも珍しくない。最近では、前大統領の弟で前フロリダ州知事ジェブ・ブッシュが12年の大統領選に出馬するかもしれないという記事に8000件以上のコメントが殺到した。6月のコメント件数は、サイト全体で3100万件に上った。
読者の衝動を理解する
アリアーナは、早い時期からコメントをチェックし、ネットでありがちな誹謗中傷合戦ではなく、より文明的な議論の場を守ろうとした。手間のかかる仕事だ。20人の専従スタッフが、悪意あるコメントの削除に当たっている。
「自己表現は新しい娯楽だ」とアリアーナは言う。「人々は情報を消費するだけでなく、自分も参加したいと思っている。その衝動を理解することが、ジャーナリズムの未来につながる」
ハフィントンは最近、SNSのような役割も果たし始めた。記事を読むだけでなく、サイトに滞在して記事について他の読者と話し合う人が増えているのだ。このようにサイトへの積極的な関与を促し、ユーザーとの関係を深めることを「エンゲージメント(関与)」と言い、広告を集める上で極めて有用だ。「私たちはユーザー参加型のソーシャルニュースサイトだ」と、アリアーナは言う。
少々大げさかもしれない。しかしそれは、ハフィントンが進化の最中だという意味でもあり、行き着く先は誰にも分からない。大手メディアに吸収される可能性もあるだろう。MSNBCとヤフーが買収を打診したという噂もあるし、株式公開を準備しているともいわれる。
これらの噂についてヒッポーは、自分とアリアーナは「独立した強固な」ビジネスを確立しようとしている、とだけ語る。ニュースサイトの時代は始まったばかりで、ハフィントンには大きな可能性がある、とも言う。
期待が持てそうな兆しもある。ニューヨーク・タイムズの4〜6月期のネット広告収入は5000万ドル。年間2億ドルのペースだ。読者数がそれほど変わらないことを考えると、年間の広告収入が3000万ドルしかないハフィントンには、まだ成長の余地があるという見方もできる。
「売り上げ1億ドル、利益率30%も夢ではない」と、ヒッポーは言う。「商品はそろっている。魅力的な読者もいる。かなり収益性の高い会社になれる」
具体的な道のりはまだ見えないが、アリアーナ自身は少しも心配していない。彼女は「ネットメディア界の女王」になりつつある。映画『市民ケーン』が描いた新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストの現代版だ。彼女はその地位を大いに楽しんでいる。確かに、いま楽しまないでどうする?
[2010年8月11日号掲載]