ハフィントン流最強ニュースサイトの作り方
広告料金を割り引く余力のあるネット大手がコンテンツ面でも存在感を増すことになると、広告料金はますます下がり、小さい会社はより苦戦を強いられることになる。ハフィントンをはじめとするニュースサイトすべてが立ち向かわなければならない問題だ。
アリアーナには多くの同志がいる。ハフィントン本社の1ブロック先には、テレビジャーナリストのダン・エイブラムズが運営するメディアを語るサイト、メディアアイトのオフィスがある。数ブロック先には、ネットの伝道師ニック・デントンが率いるブログサイト、ゴーカー・メディア。ウルフのニューサーも近所だ。
5番街に行けば、元メリルリンチのアナリスト、ヘンリー・ブロジェットがCEOを務めるビジネス・インサイダー。ソーホーの少し北のチェルシー地区には、バニティ・フェアやニューヨーカーの編集長を歴任したティナ・ブラウンが運営するニュースサイト、デーリー・ビーストがある。
ワシントンには政治情報サイトのポリティコのオフィスがあり、シリコンバレーにはおびただしい数のテクノロジー専門ブログがある。テッククランチ、ギガオム、オールシングスDなど。
ハフィントンはこれらの中でも一番大きく、知名度もとりわけ高い。アリアーナは将来を心配するそぶりはみじんも見せない。1つには、それが彼女の個性だから。アリアーナは圧倒的な存在感を持ち、あらゆるところに顔を出す。自らハフィントンに記事も書くし、13番目の著書『第3世界アメリカ』も間もなく出版される。
最先端の配信システム
ほかにも週に2つのラジオ番組を持ち、テレビでも毎日のように保守派と政治論争を交わしている。FOXテレビのコメディーアニメの声優まで務めている。
実際に会うと魅力的な女性で、少し圧倒されそうになる。近くに来る人には誰でも菓子や飲み物を勧める。「ギリシャの血が濃いのよ」と、アリアーナは言う。「おもてなし好きなの」
アリアーナは保守系コメンテーターとして有名になったが、96年頃にリベラルに転じた。AOLの元重役ケネス・レーラーと共に400万ドルを集め、05年に共同でハフィントン・ポストを設立した。さらにベンチャー・キャピタルから3300万ドルを調達し、現在は178人の社員がいる。
ハフィントンはいかにして、ライバルのニュースサイトの大半を引き離すことができたのか。豊富な資金も1つの理由だが、もう1つの鍵は新しい技術を迅速に取り入れてきたことだ。
大手サイトが稼ぐための切り札は、記事がどう配信されるかを決めるソフトウエア「コンテンツ管理システム(CMS)」。ハフィントンには最先端のシステムがあり、しかも常に進化している。30人の技術者はアメリカのほかウクライナ、インド、チリ、フィリピン、ベトナムなどに散らばっている。「1日24時間週7日、開発を続けるためだ」と、CEOのヒッポーは言う。
このシステムのおかげでハフィントンの編集者はニュースの出し方にさまざまな工夫ができる。リンクや動画、写真やコメントを組み合わせ、ほかの情報源からの情報も加え、それにハフィントンのライターたちがもっともらしい意味付けを与える。そうする間にもリアルタイムでアクセス状況をチェックし、ウケたものとウケなかったものを取捨選択する。
人気検索語を常にチェック
ハフィントンには、外に出て取材をする昔ながらの記者もいるが、多くの編集スタッフは、本社の広い部屋でテーブルに座っている。レオナルド・ディカプリオの上半身裸の写真や、野球選手の急所をボールが直撃したビデオなど、ほかのサイトからおいしいネタを集めるのも大切な仕事だ。
記事は社内で執筆するか、ほかのサイトから引っ張ってきたり、両方を合わせて編集する(コンテンツの約40%はよそのサイトで作られたものを基にしている)。