最新記事

ネット

ハフィントン流最強ニュースサイトの作り方

2010年9月1日(水)16時03分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

 広告収入の減少分の一部は、ネットメディアに流れている。だが既存メディアからウェブ上の新メディアに移る過程で、広告マネーは変質する。奇妙な魔術にでもかかったように、ドルがセントに化けてしまうのだ。

ネットメディアに詳しい調査会社eマーケターの最近の調査によると、ネット広告費は今後数年間、年率10%以上の伸びを続けて、14年までにはほぼ1000億ドル市場になるという。それでも、広告市場全体からみれば17%のシェアにすぎない。

 企業はウェブに広告を載せたいけれど、その見返りに大金を払う気は毛頭ない。それが冷徹な真実だ。実際、あなたは最近ウェブ広告をクリックしたことがあるだろうか。それどころか目をくれたことさえないのでは? 

「そろそろ誰かが本当のことを言うべきだ。ネット広告という商売は成り立たない。ウェブサイトはあまり優れた広告媒体ではないということがはっきりした」と、バニティ・フェア誌のコラムニスト、マイケル・ウルフは言う。

CPMの下落が止まらない

 ウルフは、広告収入主体のサイトも運営している。主要な新聞や雑誌の記事を要約して配信するアグリゲーターサイト、ニューサーだ。月間ユニークビジター数は200万、今年の売り上げ予想は数百万ドル。ウルフによれば、彼のサイトのCPM(広告掲載1000回当たりの広告料金)は、過去2年間で10ドルから8ドルへと20%下落した。ネット専門調査会社コムスコアによれば、ネット全体の平均CPMはわずか2ドル43セントだ。そして、これがいずれ上がると期待する人は誰もいない。

 ハフィントンのCEO(最高経営責任者)であるエリック・ヒッポーいわく、自分たちのサイトはコンテンツの質が平均を上回る分、広告料金も平均よりははるかに高いという。

 それでも、ハフィントンなどのネットメディアにとっては、コンテンツの製作費を安く上げることが至上命題。無駄は徹底的に省く。ハフィントンの編集スタッフは88人で、大手新聞などの数分の1だ。

 かつては紙メディアよりはるかに安かった人件費も、今は経験の浅い新人スタッフの年収が3万5000ドル〜4万ドルと大差なくなってきた。そこで人を雇う代わりに、他のサイトの記事を再配信したり読者に記事を書かせたりして、なるべく多くのコンテンツをただで確保する。ハフィントンの場合、6000人の無給ブロガーに記事を書かせている。

 だが安直なコンテンツは、広告料金のさらなる下落につながる。コムスコアによれば、すべてのコンテンツをユーザーが作るフェースブックのようなソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)では、CPMは56セントにしかならないという。

利幅薄く量がものをいう

 利幅の薄いこの業界では、規模の大きい会社が圧倒的に有利になる。グーグルが一つ一つは小さくて安い検索広告で数十億㌦もの広告収入を上げられるのは、それを何億回も掲載するからだ。

 ネット大手のAOLやヤフーは今、ジャーナリストを雇うなどしてコンテンツを作るビジネスに乗り出している。規模で勝負するグーグルと差別化するためだ。

 一方で、薄利多売戦略も捨てていない。ヤフーが5月にアソシエーテッド・コンテントを買収したのがいい例だ。アソシエーテッド社は、フリーの記者に100ドルかそれより少ない原稿料を払い、検索サイトのキーワード・ランキング上位に入ったネタに絞った記事を大量生産している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

野村HDの10-12月期、純利益は2倍の1014億

ビジネス

トヨタ、通期の営業益を4000億円上方修正 新車販

ワールド

トランプ氏「ガザ所有」発言、中東の不安定化招く ハ

ビジネス

午後3時のドルは153円半ば、日銀の追加利上げ思惑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 2
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 5
    中国AI企業ディープシーク、米オープンAIのデータ『…
  • 6
    脳のパフォーマンスが「最高状態」になる室温とは?…
  • 7
    DeepSeekが「本当に大事件」である3つの理由...中国…
  • 8
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 9
    AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる.....…
  • 10
    メキシコ大統領の外交手腕に脚光...「トランプ関税」…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 9
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 10
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 10
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中