「危機の記憶」に苛まれる米消費者心理
2010年7月28日(水)18時37分
身体に染みついた記憶は、経済行動に強力な影響力をもつ。80年代から90年代序盤にかけて米国債の利回りは、FRB(米連邦準備理事会)のポール・ボルカー議長がインフレを抑え込んでからも長い間ずっと高止まりしていた。1929年の世界恐慌の記憶をもつ投資家たちは、その後数十年間、株式市場に戻ってこなかった。
2008年秋、リーマンショックで借り入れが厳しくなり、死の淵を見た企業が現在、キャッシュを貯め込み続けている背景にも、同じ理由がある。また、過剰債務に苦しんだ消費者が、新商品の購入よりもクレジットカード債務の返済を優先しているのも同じ理由だ。
今やアメリカ人の身体には、経済が崩壊寸前になりかねないという記憶が染みついている。だから、消費者は財布からカネを出しながらも、どこかで警戒心をもち続けているのだ。
(Slate.com特約)
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