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ロバート・マクナマラ(アメリカ/元国防長官)

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2009.12.08

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ロバート・マクナマラ(アメリカ/元国防長官)

ケネディ、ジョンソン両政権で国防長官を務め、ベトナムへの軍事介入を推進

2009年12月8日(火)12時08分
マイケル・ハーシュ(ワシントン支局)

 あれは1965年11月のことだった。「国防総省の私の部屋の窓から10メートルちょっとのところ」に、一人の男が立っていた----ロバート・マクナマラ元国防長官の苦渋に満ちた『マクナマラ回顧録』(邦訳:共同通信社)の中でも、とりわけ衝撃的なくだりである。

 男の名はノーマン・モリソン。クエーカー教徒で、1歳になる娘を腕に抱いたまま、頭からガソリンをかぶり火をつけた(それでも炎に包まれる寸前、娘を火の外へ投げ出している)。この焼身自殺事件は、当時高まりつつあった国民の反戦意識を大きなうねりに変えただけでなく、マクナマラのその後の人生を決定づけることにもなった。

 フォードの社長時代はすご腕の経営者として一目おかれていたマクナマラだが、国防長官に転身してからはベトナム戦争が泥沼化するにしたがって国民の罵倒の的になっていく。レストランや空港でつばを吐かれ、「人殺し」とののしられた。

 身近な人間を敵に回すこともあった。マクナマラは、ジャクリーン・ケネディがニューヨークの自宅で開いた夕食会の後で起こったことを、こう書いている。「(彼女は)突然、怒りを爆発させた。私に面と向かい『この人殺しをやめさせて!』といって私の胸をたたき続けた」

27年の沈黙をやぶる「懺悔」

 しかし、マクナマラはいかなるときも冷静さを保っていた。「私は自分の感情を抑えたし、家族にも何も言わなかった」。彼が沈黙を守ること27年。すでにアメリカはベトナムでの体験に折り合いをつけ、かつては避けられていたこのテーマの映画や出版物が数多く登場し、人気を呼ぶまでになっている。そして、いよいよマクナマラの番だ。

独占インタビュー「マクナマラが本誌に語った本音

『マクナマラ回顧録』は、本人に言わせれば「絶対に書くまいと思っていた」たぐいの本、自らの過ちを断罪した本である。

 この本でマクナマラは、ケネディ政権もベトナムを理解できていなかったことを認めている。共産主義の脅威を過大評価する一方、「ホー・チ・ミン率いる運動が民族感情と結びついていることを過小評価し」、国民を欺くという大きな過ちを犯したのだ。この点で「われわれはひどくまちがっていたし、まちがった理由を次世代に説明する義務がある」。

 だが本書で目立つのは、そういう説明ができないことの言い訳のほうだ。分析力では定評のあった彼ら「ベスト・アンド・ブライテスト」たちが、なぜ戦争の結末を予想できなかったのか、マクナマラは今も答えを見いだせずにいる。「われわれは自分たちの先入観に批判的な目を向けることができなかった。今もまだ、できずにいる」

ケネディだったら撤退していた?

 当時の状況では率直な疑問を口にすることも、戦闘要員の派遣に反対するという個人的な信念を貫くこともできなかったと、マクナマラは書く。共産主義に対する大げさな恐怖がそれを妨げ、アメリカを戦争に駆り立てていったのだ。時代状況からすれば無理もないかもしれない。しかし、ジョンソンよりも勇敢で賢明な大統領がいたら、そうした状況に勝てたのではないか?

 マクナマラは言葉を濁しているが、ケネディが暗殺されずにいたら手遅れにならないうちに手を引いただろうとは記している。その根拠として、マクナマラはピッグス湾やキューバ危機のときに派兵を拒否したケネディの決断をあげる。「今すぐ米軍が撤退したら連鎖反応的な共産化を招くかもしれないが、米兵の生命と引き換えに戦争を続けてもいずれは同じ結果になる。ケネディなら、そう考えただろう」

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