環球時報社説が語る習政権「台湾統一」の行き詰まり
台湾人の民意は「蔡英文」だった(1月11日、南部・高雄市の開票所)Ann Wang-REUTERS
<過激な論調で有名な中国共産党機関紙系のタブロイド紙・環球時報が台湾総統選の「敗北」を素直に認めた。なぜか>
1月11日の台湾総統選の結果を受け、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は13日と14日の2日連続でこれに関する社説を掲載した。
蔡英文陣営の展開する選挙戦を「汚い小細工」だと罵倒した新華社通信の論評と同様、13日の環球時報社説は蔡氏の圧勝を「中国の脅威を煽り」「韓国瑜を中傷した」ことの結果だと矮小化して、それが台湾の民意であることを認めなかった。
しかし翌14日の社説で環球時報の論調は一変した。
「台湾情勢の総態勢を実事求是(客観)的に見る」と題するこの日の環球社説は冒頭からこう書かれている。
「台湾選挙で蔡英文が高い得票で再選し、民進党も立法院での過半数議席を勝ち取った。われわは、そこから反映された台湾の民意の動向を客観的に解読し、台湾社会に対するわれわれの全体認識の正しさを確保すべきだ」
つまり環球時報はここでは渋々、台湾選挙の結果が「民意の反映」であると認めた。わずか1日前の社説とは180度の評価の転換である。
そして社説はこう続く。
「蔡英文と民進党が選挙戦においてもっとも多く訴えたのは『恐中(中国に恐怖を感じること)』と『拒統(中国との統一を拒否すること)』であるが、選挙の結果は、台湾社会の大多数の人々がこのような認識を基礎とする政治路線を支持していることを示した」
中台関係史上、前代未聞の出来事
環球時報は一歩踏み込んで、中国への恐怖は大多数の台湾人の共通心理だと認めた。それと同時に、この大多数の台湾人(すなわち台湾の民意)が、中国が提唱している「祖国統一」を拒否していることも間接的ながら認めた。
これは中台関係の歴史上、前代未聞の出来事である。
鄧小平時代以来、台湾の「祖国統一」は歴代共産党政権の一貫した方針、国策である。そして共産党政権は「祖国統一こそは台湾人の利益であって台湾の未来」と主張し続けてきた。
しかしここにきて、共産党系の新聞が事実上「台湾の民意は統一反対である」と初めて認めた。しかし台湾の民意が「統一反対」なら、それは共産党政権の今までの対台湾政策と台湾工作が完全に失敗したことになる。環球時報は政権の失敗を認めつつ、国内向けにそれをさらけ出したのだ。
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