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コラム
風刺画で読み解く「超大国」の現実 Superpower Satire
昼ドラよりすごいトランプ政権人事劇(パックン)
次々に高官が去っていくホワイトハウスは空っぽになる? (c) 2018 ROGERS─PITTSBURGH POST─GAZETTE
<重要人物が消え続けるトランプ政権を見れば、誰もがトランプが社長役を務めたあのリアリティー番組を思い出す>
Youʼre fired!(おまえはクビだ!)
ある企業への就職を懸けて競い合う数人の候補者を、社長がこのセリフで1人ずつ減らしていく。そんな設定のリアリティー番組があった。社長を務めていたのはドナルド・トランプだ。
重要人物が消え続ける今のトランプ政権を見て、誰もがこの番組を思い出す。風刺画にも、空っぽのホワイトハウスが描かれているが、司法長官代理、大統領補佐官数人、広報部長4人、FBI長官、報道官、厚生長官、国務長官などなど1年余りで数十人が削られた。最高のファーストシーズンだ!
なんて面白がってはいられない。これは政府の話だ。番組に負けないぐらい面白いけど。17年7月、トランプが広報部長にアンソニー・スカラムッチを指名した。それに怒って、ショーン・スパイサー報道官が辞任した。次に、スカラムッチに追いやられ、ラインス・プリーバス首席補佐官が更迭された。そして、新しい首席補佐官ジョン・ケリーの求めに応じて、トランプがスカラムッチをクビにした。これがたった10日間の出来事。昼ドラよりドロドロだ。
Youʼre fired!のタイミングも面白い。アンドルー・マケーブFBI副長官を飛ばしたのは、彼が引退する26時間前! 本人は面白くないだろう。解雇で年金の満額受給はパアになる。「トランプ人事劇」はパターンが読めない。例えば大統領を「バカ」と呼んだレックス・ティラーソン国務長官や、娘婿を反逆者呼ばわりしたスティーブ・バノン首席戦略官を見れば、「けなせば消える」と分かる。だが、「大統領に尽くす恵みを与えてくださり感謝しています」と、神様のように扱ったプリーバスも飛んだ。褒めても消えるようだ。
広報部長だったホープ・ヒックスの件も矛盾している。「大統領のために、罪のない嘘をつくことがある」と議会で証言した後、辞任することになった。大罪となるような嘘を毎日つく人は少なくとも1人、ホワイトハウスに残っているのに。
そういえばあの番組出身で、政権に就いた人は大統領以外にもいる。3回出場したオマロサ・マニゴールトで、補佐官に任命された! もちろん既にクビになっているけどね。
【ポイント】
WILL THE LAST ONE TO LEAVE PLEASE TURN OUT THE LIGHTS?... HELLO?...
最後に出ていく人は明かりを消してもらえるかな?...... おーい?
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