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コラム
風刺画で読み解く「超大国」の現実 Superpower Satire
トランプ「機密メモ」公開は、あのハーディング事件にそっくり(パックン)
トランプが「機密メモ」という鉄パイプでFBIを襲撃 ©2018 ROGERS─PITTSBURGH POST─GAZETTE
<トーニャ・ハーディングの事件以来、非道徳な手を使って他人を倒すことを「トーニャする」と表現する>
フィギュアスケート界の姫、ナンシー・ケリガンが94年に鉄パイプで膝を殴られ、大けがをした。犯人はライバル選手トーニャ・ハーディングの元夫。一連の事件を描いた映画『アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル』(原題I, Tonya)はアカデミー賞に複数ノミネートされた話題作だ。ちなみに事件以来、非道徳な手を使って他人を倒すことを「トーニャする」という表現で指す。
風刺画では鉄パイプを手に愉快に滑るドナルド・トランプ米大統領の隣に、KOされたFBIの姿が見える。ロシアによる大統領選介入にトランプ陣営が協力した疑いを捜査しているFBIは、昨年からトランプの攻撃を受けている。彼は昨年5月にFBI長官を解任した。そして新しい長官を選んだのに、その彼をも批判した。捜査に関わらないと決めた司法長官に怒りをぶつけ、その代わりを務める副長官をも批判した。
1月末にはFBI副長官を辞任に追い込んだ。そして2月2日、捜査の信頼性を疑問視する「機密メモ」を、司法省の反対を押し切って公開した。このメモの作成を主導したのは元トランプ陣営でもある下院情報特別委員長。内容にはあまり説得力がないが、捜査への疑念を国民に持たせる作戦として大成功したとみられる。
このやり方は共和党の常套手段だ。半世紀も前から、不都合な真実を伝える人や機関を「偏っている」「リベラルだ」「腐敗している」「国民の敵だ」「嘘つきだ」などと批判してきた。今や、少なくとも共和党支持者の間では、メディアも専門家も学者も裁判官もそして政府自体も、何を言っても信用してもらえない状態になっている。つまり、どれもトーニャされたってこと。
その中でも、FBIはほぼノータッチだった。共和党寄りの機関だからだ。歴代長官は全員共和党員! 今回の捜査に関わっている職員もそう。なのにトランプの鉄パイプが......。
でも実は、ハーディングの話から少し希望ももらえる。暴行を受けたケリガンはすぐに回復し、リレハンメル五輪で銀メダルを取った。さらに事件の黒幕と思われたトーニャは司法妨害の罪に問われ、スケート界から追放された。FBIも復活するかも! 司法妨害したとしてトランプが追放されるかも! そんなストーリーなら『I, Donald』もぜひ見てみたい。
【ポイント】
機密メモ公開
4ページにわたる文書の内容は、トランプ陣営関係者のカーター・ページをFBIが不正に盗聴・監視していたというもの。トランプは、FBIによるロシア疑惑の捜査が反トランプに偏向している証拠だとしている
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