コラム

暴走止まらない橋下徹市長、なぜその「正義」が通用してしまうのか

2015年11月18日(水)17時00分

メディアを凌辱しながら管轄するのが橋下政治の真骨頂 Yuya Shino-REUTERS

「こっちが本物、あっちは偽物」、「いいやそっちこそ」と言い争った「維新の会」の分裂は、血気盛んなロックバンドが勢い任せにバンドをぶち壊しているようにしか見えなかったし(分裂後、バンド名の使用権を争うこともよくある)、この22日に投開票される大阪府知事・大阪市長のダブル選挙は、任期満了に伴う選挙ではあるものの、「解散します」と宣言していたミュージシャンが早速「再結成します」と意気込んでいるかのように見える。

 橋下徹・大阪市長は、今年5月の住民投票で大阪都構想が否決されると、今年いっぱいでの政界引退を表明した。今回の知事選では引き続き、松井一郎・現知事が立候補しているが、彼は住民投票が否決された時から、「政治家として燃えるようなことが出てきたときに、二度とやらないとはいえない」(産経WEST)と含みを持たせてきた。

 反対多数で否決されたことを受けた会見で橋下市長は「日本の民主主義を相当レベルアップしたかと思います。大阪市民のみなさんがおそらく全国で一番政治や行政に精通されている市民ではないかと思っています」と、自分の敗北を出来うる限り清々しいストーリーで伝えようとしたが、あらゆる出来事を劇場化する振る舞いに慣らされた人たちは、そのストーリー変換に同調することはなかった。

 しかし、朝日新聞が14、15日に行った電話調査によれば、来たるダブル選挙では、知事選・市長選のいずれも「大阪維新の会」公認の2人が優位に立っているという。在京のテレビではあまり報じられていないダブル選挙だが、なぜいまだに橋下政治の「正義」が通用し続けているのだろう。選挙の時期に合わせて出版された2冊の本に頼ることにする。

 藤井聡・編『ブラック・デモクラシー 民主主義の罠』(晶文社)の編者は、都構想について「賛否はさておき」と譲歩しつつも記したコラムについて、橋下市長から「バカな学者」、「お世間知らずのお学者様」、「内閣参与のバカ学者」と罵られ続けた。今回、その憤りを注ぎながら、橋下政治の構造を読み解く1冊を編み上げた。

プロフィール

武田砂鉄

<Twitter:@takedasatetsu>
1982年生まれ。ライター。大学卒業後、出版社の書籍編集を経てフリーに。「cakes」「CINRA.NET」「SPA!」等多数の媒体で連載を持つ。その他、雑誌・ウェブ媒体への寄稿も多数。著書『紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社)で第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。新著に『芸能人寛容論:テレビの中のわだかまり』(青弓社刊)。(公式サイト:http://www.t-satetsu.com/

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