コラム

メドベージェフは後継本命から後退...プーチンが絶大な信頼を置く「影の実力者」とは

2022年10月19日(水)17時22分

5. セルゲイ・ソビャーニン(モスクワ市長)

221018p18_PPT_08.jpg

MAXIM SHEMETOVーREUTERS

私がモスクワで過ごしたほとんどの期間、ソビャーニンは市長としてモスクワを大いに発展させた。実際、私がモスクワに住むことにしたのは、市長による街の美化運動が大きな理由だった。モスクワはロシア経済全体の40%以上を占める巨大経済圏だ。

大手チューブ圧延工場の元工場長という経歴の持ち主で、その後チュメニ州知事、大統領府長官、副首相を歴任。メドベージェフの大統領選では選対責任者を務めた。10年にモスクワ市長に就任し、現在3期目。

ソビャーニンは今回の戦争について、どちらかと言えば抑制的な発言を繰り返し、戦争がモスクワ経済に与える影響も認めている(今夏にはウクライナ東部のルハンスクを訪問したが)。その慎重姿勢はソビャーニンがプーチンの有力な後継候補と目されていることの表れではないか、という見方もある。

ソビャーニンは国際的な大都市の市長を長年務めた経験から、いつまでも西側から排除されたままではロシアは立ち行かないことを知っている。メドベージェフのような強硬発言をすれば、関係修復はほぼ不可能だ。戦争支持を表明する一方で、いずれ世界の舞台に躍り出るために自分自身の信用を保つ──ソビャーニンはそんな綱渡りを演じている。

6. ドミトリー・コバリョフ(大統領府局長)

221018p18_PPT_06v2.jpg

SEFA KARACANーANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES

36歳の若さで大統領府の局長を務めるコバリョフは、プーチンからの信頼が極めて厚い。数カ月前にロシアで最も重要な対独戦勝記念日の式典でプーチンと親密に会話する姿が流出すると、両者の関係をめぐる噂はさらに強まった。内部関係者によれば、最大の強みはその若さ。おかげで特定の派閥や対立関係に巻き込まれずに済んでいる。おそらくプーチンも若さを評価しており、弁舌巧みで頭の回転が速いコバリョフをかつての自分に重ねているようだ。プーチンがあと10年前後で引退した場合、コバリョフはプーチンとほぼ同じ年齢で権力の座に就くことになる。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB総裁ら、緩やかな利下げに前向き 「トランプ関

ビジネス

中国、保険会社に株式投資拡大を指示へ 株価支援策

ビジネス

不確実性高いがユーロ圏インフレは目標収束へ=スペイ

ビジネス

スイス中銀、必要ならマイナス金利や為替介入の用意=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 3
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピー・ジョー」が居眠りか...動画で検証
  • 4
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 7
    大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何で…
  • 8
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    世界第3位の経済大国...「前年比0.2%減」マイナス経…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story