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日本の「かわいい」と似て非なる「ピンク・カルチャー」とは何か
こうしたコリンズにとって、作品の創作に大きな影響を与えたのはクラッシックバレエだ。怪我でプロになることをあきらめなければならなかった、かつての生き甲斐である。
バレエで感じた肉体的な動きの感覚は、彼女が好んで使うフィルムの、装填などを必要とする撮影方法と類似性があるという。そして、被写体、モデルたちの物理的な動きがいかに魅力的なラインに繋がっていくか、それを見極めることにも役立っている、と。
だが、もうひとつ、作品に大きな影響を与えた存在がある。80年代、90年代前半のニューヨークのイースト・ヴィレッジだ。麻薬、エイズ、暴力が蔓延し、退廃と危険な匂いが街中に付きまとっていた地区である。
一見、彼女のピンク、パステル調の写真と当時のイースト・ヴィレッジのアンダーグラウンド・カルチャーは、とても繋がりがなさそうに思える。しかし、街の反体制的なイメージにはエネルギーと希望が常に包容されていた。そうしたあらゆる要因をコリンズは独自の感覚で昇華させ、意識的にしろ、無意識にしろ作品に取り入れたのである。
実際、彼女はまだ生まれていなかったにもかかわらず、その時代のイースト・ヴィレッジにノスタルジーを感じるという。また、彼女のメンター(師匠)、あるいは飛躍のきっかけになった2人、リチャード・カーンとライアン・マッギンレーは共に、それぞれの形で深くイースト・ヴィレッジに関わっていた。
最後にひとつ、クライアントについてコリンズに尋ねたことを記しておきたい。彼女の現在のクライアントにはリーバイスやアディダスなどの大企業を含むが、それは自らの政治的・フェミニズミ的な信念と相反しないか、ということだ。
「必ずしもそうは思わない」という答えが返ってきた。なぜなら「(社会を)変化させるためには、(社会)システムを学び、自らもその中に存在してからでなければできないから」と。
今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Petra Collins @petrafcollins
【参考記事】美しいボディ・パーツが発するメッセージ
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