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シャッターを切るまでに「半年~1年」と学者のように語った
論理を先行させる写真家という意味ではない。優れた物理学者や数学者が、しばしば第六感的なものでひらめいた感覚的な答えを、そのエクスタシーを追求しながら必然的に理論を構築していくように、写真家クルーズも、ただ限りなく満足のいく作品を追い求めて、論理的な実践と労力を惜しまないのである。計算された論理的なプロセスさえも、ある種の感覚的な楽しみとして捉えているのだ。
実際、彼の作品のヴィジュアル性は、まったくコンセプチャルではない。むしろその逆だ。白黒写真を基調とし、人間ドラマに潜む感情や知覚性を、耽美的かつ徹底的に昇華した産物なのである。同時に、美しいがゆえに、また力強いがゆえに、彼の作品の裏にあるコンセプトも伝わる。隠れた、あるいは顧みられていない非人間的な物語を社会に訴えることができるのである。
――と、ここまで彼を褒めたたえたが、彼自身にはその才能ゆえに1つきつい質問をしている。
白黒を基調とした力強く耽美的なスタイル、しかもNGO受けする写真ストーリーというのは、ここ数年、才能ある若手の写真家が国際的な地位を獲得するための、ある種の"近道"的なクリシェ(目新しさのない常套手段)となってきている。それは結果的にフォトドキュメンタリー/フォトジャーナリズム業界(Industry)を縮小させていくと思わないか?
彼の答えは、ノーだった。意味のある力強い作品である限りクリシェではない、と。むしろ最大のクリシェは、フォトドキュメンタリー/フォトジャーナリズムにIndustry という言葉を使い続けていることだ、と。
【参考記事】「iPhoneで3年だけ」の写真家が、写真をアートに昇華させる
今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Mario Cruz @_mariocruzphoto
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