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なぜイランには自分自身を撮る写真家が多いのか
タクビーリもそうしたひとりかもしれない、と思った。とりわけ、彼女の作品の1枚(上の写真)には、父親の写真が添えられ、「It was my father who taught me to value myself. He told me that I was uncommonly beautiful and that I was the most precious thing in his life――自尊心を持つことを教えてくれたのは父だった。私のことを本当に美しく、彼の人生でもっともかけがえのないものと言ってくれた。」と書かれていたからである。
だが、読みははずれた。大学で「芸術/建築」を専攻したアカデミック・バックグラウンドを持ち、高度で繊細な文明を築いた古代ペルシアの伝統の中で、だが同時に、現在は非常に厳格な社会体制となっているイランで生まれ育った彼女にとって、セルフポートレイトのコンセプトはもっと哲学的なものだった。
「鏡と窓」展で、写真のもつ二次元論的特質(写真家自身の内面性のメタファーと外的社会への探求)を説いたニューヨーク近代美術館(MoMA)の写真ディレクター、ジョン・シャーコフスキーを引き合いに出し、タクビーリはこう語る。「それは23歳の私自身が生きているイラン社会への探求であり、自分自身の内面的ポートレイトでもある」
内面性と外面性の凍結――写真の持つ一見相反する2大特質を巧みに重ね合わせながら、その間を行き来しながら、タクビーリはイラン社会と彼女自身の「生」の意味、葛藤、喜び、同時に父親が彼女に教えた自身への尊厳の意味を探り続けているのである。
今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Negar Takbiri @negartakbiri
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