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前代未聞の「宮殿撮影」プロジェクトを完遂した、ロシアのコンセプチュアリスト
だが、彼女の本当の魅力は、作品の奥底から解き放たれて絡みつくような不思議な感覚だろう。ロシア独特のある種"宮廷的な"匂いだ。優雅さとワイルドさ、セクシーさ、それに退廃した雰囲気が見事に絡み合っているのである。カティア・ミ自身、意図的にそうしたものを作品に加えようとしているという。
とはいえ、そうした感覚は、簡単に生み出せるものではない。1つ1つの要素が噛み合わなければ、魅力はなくなってしまう。それどころか鼻につくだけで終わってしまう。ロシアの伝統と文化的なバックグラウンド、それに時代と彼女の才能とが見事に絡み合って生まれたのである。
近年、彼女はインスタグラムを通して、前代未聞とも言えるやり方で大プロジェクトを完遂した。ロシアの象徴であるクレムリン(上の写真)、エルミタージュ美術館、ボリショイ劇場などを含む歴史・文化遺産との、その場そのものを借用してのコラボレーションだ。撮影許可を取るだけで大変である。事実、クレムリンなどは、インスタグラムのプロジェクトとして初めてだったこともあり、許可を得るまでに5カ月もかかったという。プラス、スタッフや衣装、移動、滞在をアレンジするのに多大な費用と時間、エネルギーがかかる。それらを実質上全て、彼女自身の資金とコネクションによりプロデュースしているのである。
目的は大きく分けて2つある。1つは、ロシアの歴史・文化的イコンに新たな存在価値を見出すこと。もう1つは、プロジェクトを通して若者たちによる新しい文化を作り出し、同時にロシアのアートと歴史に対し、彼ら自身の愛を喚起させることである。最も影響力を持つソーシャルネットワークの1つになったと言われるインスタグラム、そしてそのインスタグラムで50万人以上のフォロワーを持つカティア・ミ――新たな時代の扉が開けられるかもしれない。
今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
_ K ▲ T I A ● @katia_mi
_ K ▲ T I A ● c o l o r f u l @katia_mi_
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