コラム

イノベーションは民間企業だけのものではない/God forbid(決してそんなことはないように祈ります)

2016年04月11日(月)12時33分

【今週のTED Talk動画】 Government - investor, risk-taker, innovator - Mariana Mazzucato
https://www.ted.com/talks/mariana_mazzucato_government_investor_risk...

登壇者:マリアナ・マッツカート

 イノベーションと言われてまず頭に浮かぶのは、おそらくアップル、グーグル、フェイスブックなどのシリコンバレーの企業であろう。これらはすべてリスクと引き換えに革新性をどんどん追求している会社である。しかし、イノベーションを研究しているイギリスのサセックス大学の経済学教授マリアナ・マッツカート氏は、このTED Talkで、そういった民間企業が生み出す商品の裏には政府の貢献もあると説明している。

【参考記事】ベンチャーの成功要因で最も重要なのは、タイミングだった/In denial(~を否定している

 政府は通常、行動を起こすのに時間がかかるため、政府の活動は制限すべきだと言う声が多いが、マッツカート氏は違った観点を紹介している。イノベーションを推進するためには、政府に何ができるかにもっと重点を置いて、public-private partnership(公共と民間の協働)をもっと促進すべきだと主張しているのだ。彼女は特にヨーロッパ人を対象にそうアドバイスしているが、シリコンバレーの企業を羨ましく見ている国(日本を含めて)すべてにとって当てはまる話だと言える。

【参考記事】試作すらせずに、新商品の売れ行きを事前リサーチするには?

キーフレーズ解説

God forbid
決してそんなことはないように祈ります

(動画7:15より)

 この表現は私の祖母が頻繁に使っていたもので、その影響から私もよく使います。もともとは迷信に由来する表現で、何か起こって欲しくないことを口にする時に、その前にGod forbidという言葉を入れてそれが起こらないように願う、という意味合いがあります。要するに、神様に助けを求めることで、その悪いことを防ごうという意味で使われるのです。そういう意味では、祈りの一種だと言えるでしょう。God forbidを使わずに、起こって欲しくないことを口にすることは危険だという意識が昔の人にはありましたが、私たち現代人にもその意識はいまだ残っています。

 ここからはGod forbidを使った例をいくつか紹介します:

●If God forbid anything happens to her husband, she will be glad to have life insurance.
(決してそんなことはないように祈りたいが、彼女の夫にもしも何かあったら、彼女は生命保険を持っていてよかったと思うだろう)

●If God forbid it rains on the day of the wedding, we will have the reception indoors.
(決してそんなことはないように祈りたいですが、もし結婚式の日に雨が降ったら、リセプションを室内で行います)

 この表現は皮肉の意味合いで使われることもあります。その場合、対象者がして欲しいことをなかなかしない時にそれを指摘するために利用されます。「~すればいいじゃないか」という意味に近いですが、同時に辛辣な批評の雰囲気も併せ持っています。

 例えば以下の文章のように使われます:

●God forbid you should call your mother once in awhile.
(時々はお母さんに電話すればいいじゃないですか)

●God forbid he should lift a finger to help his wife with the housework.
(奥さんの家事を手伝えばいいのに、彼は決してそういうことをしないね)

 そしてもう一つは、その対象を悪いこととは思っていないけれど、それが悪いと思っている人がいることを指摘して、その人をちょっと馬鹿にするような使い方です。マッツカート氏もこの使い方をしています。彼女は政府に関して、It was even, God forbid, being a venture capitalist.と言っています。この表現を利用することによって、政府がventure capitalistとして活動することがおかしいと思っている人を認めながら、そのことは実は全然問題ではないという考え方を示しています。

プロフィール

ロッシェル・カップ

Rochelle Kopp 異文化コミュニケ−ション、グローバル人材育成、そして人事管理を専門とする経営コンサルタント。日本の多国籍企業の海外進出や海外企業の日本拠点をサポートするジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社の創立者兼社長。イェ−ル大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営大学院修了(MBA)。『シリコンバレーの英語――スタートアップ天国のしくみ』(IBC出版)、『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』(クロスメディア・パブリッシング)、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』(アルク)など著書多数。最新刊は『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(共著、クロスメディア・パブリッシング)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story