コラム

重たいEV時代にはそぐわない日本の1100キロ基準

2024年06月26日(水)11時30分

つまり、世界中で2トン前後のEVがかなりの勢いで増えているわけです。ということは、どう考えてもガソリン車を含む自動車の型式認定の際には、1100キロの台車を衝突させた実験ではなく、1800キロの方が現実的と言えます。もしかしたら、1800キロでも軽すぎるかもしれません。

後方衝突試験、つまり追突されても燃料漏れなどの重大な事故にならないような強度を確保する試験の場合、確かにEV時代の前であれば1100キロという数字にも妥当性があったかもしれません。ですが、今は、1800キロから2000キロというのは必要ではないかと思うのです。普通のサイズのセダンタイプのテスラが、後方から追突してきたら、簡単に車両の後部が壊れてしまい、燃料漏れなど重大な問題を起こすのであれば、それはやはり問題だからです。


もちろん、日本の場合は軽四輪があるなど、特殊事情もあると思います。ですが、軽四だからテスラに追突されて潰れたり炎上したとしても仕方がないとは絶対に言えないと思います。とにかく、この問題に関しては、国交省も1100キロにこだわることなく、EV時代にふさわしい後方衝突試験の基準をメーカーなどと一緒に考えていって欲しいと思うのです。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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