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アメリカ「児童労働」議論の背景にある深刻な人手不足
コロナ禍が過去のものとなったアメリカでは各産業で人手不足が深刻に Brian Snyder-REUTERS
<まるで開拓時代のような共和党の「自己責任論」と、教育の権利を侵害する規制緩和は認めないとする民主党のせめぎ合い>
昨年以来、アメリカの各州では「児童労働」についての議論が盛んになっています。児童労働(チャイルド・レイバー)といっても、アメリカが世界各国の人権に関心を向けているとか、あるいは、アメリカ国内でも、違法なブローカーなどが海外から未成年者を不法に連れてきて強制労働させるといったケースではありません。
各州において、普通に住んでいるその州の子どもたちの「労働」をどうするか、議論が白熱化しているのです。具体的には、14歳から17歳、アメリカの高校1年生から4年生を対象とした話です。
アメリカの高校生が、働く、つまり日本風に言えばアルバイトをするというのは、日常の光景です。日本の場合は、一般的に首都圏など都市部では見かけますが、地方に行くと校則などで禁止されている場合が多いようです。反対に、アメリカの場合は、治安の関係などもあって大都市より地方で一般的です。
当然ですが、この「高校生のバイト」には色々な規制があります。まず、学業との両立が崩れたり、部活に参加できなくなったりしては教育を受ける権利が侵害されます。そこで、州にもよりますが平日は一日2時間、週末は一日4時間といった労働時間の制限があります。また深夜の9時以降は禁止するとか、危険な工場の生産ラインでの労働は禁止するなど、多くの規制があります。
この規制を緩和して欲しい、これが今回の論点です。対立構図としては、共和党が規制緩和に熱心で、その背後には人手不足に悩む地方の中小事業者の声があります。これに対して、多くの場合、民主党は反対に回ることが多くなっています。何よりも、グローバル経済の中で知的労働にシフトしているアメリカでは、若者に高等教育を受けさせることが、本人と国家の成功につながる、従って教育の権利を侵害するような規制緩和には反対という考え方です。
地方で深刻化する人手不足
そうではあるのですが、現実としては各州における「人手不足」はかなり深刻を極めています。特にコロナ禍を過去形にして「完全にノーマル」な社会となる中で、今年、2023年の夏のシーズンは、小売、観光、サービスといった産業は人集めに必死です。また、不法移民への締め付けが続く中では、大規模農園なども労働力の確保に苦しんでいます。
規制緩和の内容ですが、ニュージャージーの場合は昨年、2022年に法改正を行っています。内容としては時間制限の緩和が主で、夏休み期間中、14歳と15歳は週40時間、16歳と17歳は50時間まで労働を許可しています。また、高校生の「アルバイトを登録し許可する権限」を各学校から州の労働局に一本化し、迅速な許可を下ろすようにもしています。
一方で、かなり物議を醸しているのが今回2023年の夏から施行されたアイオワ州の新法です。アイオワでは、14歳と15歳は学期中でも一日6時間、夜は午後9時までの労働を認め、6月1日から9月第1週までは深夜11時まで認めるというのです。16歳以上は成人と同様、つまり児童労働規制の対象から「外す」としています。
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