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クルーズ船対応に見る日本の組織の問題点──権限とスキルの分離が組織を滅ぼす
クルーズ船内の防疫体制に関する指摘は様々な波紋を投げかけた Kim Kyung Hoon-REUTERS
<心理面や関係性をコントロールすることで組織を動かそうという手法は世界中にあるが......>
横浜港に入港中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号について、神戸大学の岩田健太郎教授が投稿した動画が話題になりました。船内における防疫体制が不十分だという動画の指摘が、様々な波紋を投げかけたからです。
この動画については、約1日半後に削除されていますが、その一方で岩田医師が船内で活動するのを手助けしたという、高山義浩医師のコメントも話題になりました。高山医師は、
「『DMAT(災害派遣医療チーム)として入る以上は、DMATの活動をしっかりやってください。感染管理のことについて、最初から指摘するのはやめてください。信頼関係ができたら、そうしたアドバイスができるようになるでしょう』と(岩田医師に)申し上げました。」
「いきなり指導を始めてしまうと、岩田先生が煙たがられてしまって、活動が続けられなくなることを危惧したのです。」
「岩田先生の感染症医としてのアドバイスは、おおむね妥当だったろうと思います。ただ、正しいだけでは組織は動きません。とくに、危機管理の最中にあっては、信頼されることが何より大切です。」
という指摘をしています。いきなり船内に乗り込んでアドバイスを始め、拒まれるとユーチューブなど海外メディア経由でのメッセージ発信という手段に出た岩田医師について、そのキャラを評価しつつも「諌(いさ)めた」のが高山医師でした。」
日本の組織の「当たり前」
この高山医師のコメントもネットを通じて拡散されることで、岩田医師のメッセージと合わせて、「クルーズ船内部の防疫体制には問題がある」という事実が、ある種の客観性をもって社会に伝わったのは良かったと思います。
ただ、高山医師の「正しいだけでは組織は動かない」という指摘は、非常に重たいものがあります。これは、官庁、民間、学校から町内会に至るまで、日本の組織では「当たり前」とされている考え方です。
つまり人間は正論だけでは動かない、組織内の人々の自尊心を尊重しながら、心理的な不安感を除去して納得感を獲得する、つまり人間の理性ではなく動物的な感情面をコントロールしながら、人間関係のイニシアティブを取らなくては組織は動かないという考え方です。
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