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統計不正を追及する前に、そもそもなぜ日本の賃金は下がったのか?
世代が若くなるにつれて年収が猛烈に低くなっている ooyoo/iStock.
<日本の賃金が下がったのは、日本の産業が負け続けているから――生産性向上と同時に本質的な産業構造の転換を図らなければ日本経済は上向かない>
毎月の勤労統計、賃金統計など、厚生労働省の統計について多くの不正が発覚し、批判を浴びています。確かに、こうした不正は全く良いことではありません。ですが、これを機会に「統計を扱う要員を増やせ」とか、中には厚労省は忙し過ぎるので分割しようなどという「焼け太り」を狙う提案もあるようです。これはいただけません。
勤労統計や賃金統計というのは、いわばルーチンです。正しいデータを提出することを民間に義務付ける、その際に紙ではなくデータで電送させ、信ぴょう性のある元データが毎月リアルタイムで揃うようにする、その上で「統計を理解した専門の担当者」が管理するようにすれば、何千人などという要員は必要ないはずです。
人手が必要になるのは、例外処理が発生するような運用がされていたり、紙のデータを受け付けるなどの非効率を許していたりするからです。今回のスキャンダルを機会に、仕事の進め方をより標準化、簡素化、迅速化すれば、コストも含めて効率化を達成しつつ、データの信頼度を回復することは可能だと思います。
ですから、そもそも「統計担当の人数を増やせ」などという野党の批判は、ほとんどナンセンスだと思いますが、それ以上にナンセンスなのは、この問題を深追いするあまり、「そもそもどうして賃金が下がったのか?」という重要な論点を忘れていることです。
それでは、どうして日本の賃金が下がったのでしょうか?
現象面から言えば、80年代までは正規労働だった職種がどんどん非正規になっていったとか、初任給水準が30年近く据え置かれ、さらにはその後のベースアップも極めて低水準だったので、世代が若くなるにつれて年齢別の年収が猛烈に低くなっていることがあります。
ですが、こうした現象面は結果に過ぎません。
そうではなくて、日本の経済が負け続けているからです。
例えば、家電の最終組み立てという業種があります。80年代までは日本は世界の先端を行っていました。ですが、今は世界の工場としての地位は中国に取られてしまっています。最初のうちは、日本で研究開発した製品を中国に作ってもらっていました。ですが、白物家電などは、どんどん中国や他国のメーカーにシェアを奪われています。
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