- HOME
- コラム
- プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
- こんなはずではなかった「3.11からの5年間」
こんなはずではなかった「3.11からの5年間」
防潮堤の問題もそうです。甚大な津波被害を受けた沿岸部には、巨大堤防を作ってコミュニティを残す選択、高台移転をするかわりに堤防は簡素化して沿岸の自然を観光資源として再生するという選択もありました。ですが、多くの場所で、「巨大防潮堤」が建設される一方、高台移転も当初計画ほどには進んでいないようです。
そんな中、「10メートル級」という巨大防潮堤が、沿岸部ではその姿を現しつつありますが、「人間が閉じ込められているようだ」とか「劇画『進撃の巨人』に出てくる壁を思い出す」といった感想も出ているようです。当然ですが、そのような感想が出てくるということは、「リアス海岸の自然」という観光資源が消滅したことを示しています。結果として、流出した人口の戻りは鈍くなる可能性が濃厚です。
震災の直後に、「ルネサス・エレクトロニクス」の工場が被災して半導体の生産がストップしたことで、多くの自動車メーカーが「支援」に駆けつけたのが「美談」とされました。ですが、その後、同社の経営状態は行き詰まってしまい、現在では、規模も経営形態も震災前とはまったく別の姿となっています。
ルネサスはどうして行き詰まったのでしょう? その生産能力が欠けては、世界の大手の自動車メーカーが困るほどの独自技術を持っていながら、下請けに甘んじることで、価格決定のイニシアティブが取れないことが原因でした。ですが、以降の5年間で、同様の問題は日本経済を揺さぶり続けたのです。弁解の余地はないにしても、タカタの問題には同様の構図があります。またシャープの誤算は、独自技術さえあれば部品産業として延命できるという「甘い見通し」を続けたからでした。
【参考原稿】<震災から5年・被災者は今(2)> 原発作業で浴びた放射線への不安
原発、防潮堤、下請け部品産業、一見するとバラバラの問題に見えますが、一つの共通点があります。それは、現代の日本が「全体としての最適解」に到達しにくい社会だということです。
原発の問題では賛成論と反対論が向き合って冷静な「考え直し」の議論をする仕組みは、このような事故を経験したにもかかわらず成立しませんでした。防潮堤については、賛成も反対も不明確なまま、既成事実として巨大堤防が地域の景観を激変させてしまっています。
エレクトロニクス産業の「下請け化・困窮化」は、産業全体が世界の消費者と乖離してしまった結果ですが、個々がバラバラのサバイバルゲームを戦う中では、それが「最適解ではない」という「考え直し」をする余裕もないまま、追い詰められてしまっています。
あの日から「5年」の節目にあたって、「こんなはずではなかった」という思いがどうしても消せないでいます。
ロス山火事で崩壊の危機、どうなるアメリカの火災保険 2025.01.15
日鉄はUSスチール買収禁止に対して正々堂々、訴訟で勝負すればいい 2025.01.08
日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落 2024.12.25
日産とホンダの経営統合と日本経済の空洞化を考える 2024.12.18
医療保険CEO銃殺事件が映すアメリカの現在 2024.12.11
二期目のトランプと「現実世界」を繋ぐのは誰か? 2024.12.04
日本とアメリカの現状否定票、その共通点と相違点 2024.11.27
-
港区 営業アシスタント「海外ネットワークを持つ外資系総合商社」フレックス/残業月10h/年休120日
コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド
- 東京都
- 年収500万円~550万円
- 正社員
-
一般事務/メーカー 残業なし/外資系企業/20-30代活躍中
株式会社スタッフサービス ミラエール
- 東京都
- 月給20万6,000円~
- 正社員
-
貿易事務/流通関連 駅チカ/外資系企業/20-30代活躍中
株式会社スタッフサービス ミラエール
- 東京都
- 月給20万6,000円~
- 正社員
-
経験5年必須/プリセールス/年商250億円企業/リモート可/外資系企業
SAI DIGITAL株式会社
- 東京都
- 年収400万円~750万円
- 正社員