コラム

政府はどうして「秘密」を持ちたがるのか?

2013年11月21日(木)10時40分

 政府が秘密を作りたがるのは、原発や軍事外交問題だけではありません。多くの場合は秘密の背後には、利害関係にまみれた腐敗があるのだと思います。本人は必要悪だと思っていても、世論の批判に耐え得えないということは、要するに悪だと分かっているわけです。秘密を作りたがるメカニズムはそのようなものであり、昔から言う「絶対的な権力は絶対的な腐敗を招く」という言葉と裏表を成していると思います。

 特定秘密の解除について、日本維新の会は何と「60年」などという長期間を提案してきたわけですが、これも60年ぐらいしないと「正しい現実的判断」が歴史により公正に評価されないということではなく、要するに「自分が存命の間には世論の公正な批判には耐え得ない」ような無能で脆弱な人物が政官界には多いということの裏返しの証明としか思えません。

 では、現在よりももっと有能な人間を政治家や官僚にすればいいのでしょうか?

 そうではないのです。複雑化した現代という社会では、どんなに有能な人間でも全ての課題について最適解を常に判断して、しかも世論を納得させるなどということはできないのだと思います。逆にそんな怪物のような天才政治家が現れて、しかも成功して信頼を勝ち取った後に肝心の局面でコケたりしたら大変です。

 要するに情報を開示して、早め早めに世論に相談してゆくしかないのです。そのようにして、世論も鍛えられるということもありますし、そもそも世論と乖離した判断をしなくてはならず、それを60年も隠してゆくのが「結果オーライの統治である」などというのは、変化の激しい現代において何の意味もないように思うのです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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