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【写真特集】殺戮者の子供と生きたルワンダの母親たちの25年
DISCLOSURE–RWANDAN CHILDREN BORN OF RAPE
Photographs by JONATHAN TORGOVNIK
<母アネットと息子ピーター、*本文後のキャプションに続く>
<殺人者であるフツの血を引く赤ん坊は忌み嫌われ、母と共に周囲から孤立した>
アフリカ中部の小国ルワンダで、多数派のフツ人が少数派のツチ人100万人近くを殺害した「ジェノサイド」から25年がたった。
殺戮の間に、フツの民兵集団によって25万~50万人ものツチの女性が性的暴行を繰り返し受け、およそ2万人の子供が誕生したといわれる。極めて父権的な地元社会では、子供は父の一族と見なされるため、殺人者であるフツの血を引く赤ん坊は忌み嫌われ、母と共に周囲から孤立した。
今では「アフリカの奇跡」といわれる発展を遂げるルワンダの中で、母子たちは何世代も受け継がれる複雑なトラウマと戦い続けている。
写真家のジョナサン・トーゴブニクは、2006年から3年間彼らを訪問。その様子を本誌07年9月19日号「紛争が生んだ母子の肖像」で紹介し、写真集『ルワンダ ジェノサイドから生まれて』(邦訳・2010年、赤々舎)を出版した。
それから約10年後、トーゴブニクは、成人して出生の経緯を知った子供と母親たちを再訪し、かつての写真と並べた。
わが子を見るたびに、おぞましい体験がよみがえり、愛することができないと語っていた母親や、実父が母の家族を虐殺した殺人者だと聞かされた子供たちは、今どうしているのか。残忍な境遇の中での葛藤、親子のねじれた関係性、そして、ほんの少しの希望――トーゴブニクは、紛争地帯で武器として行われる性的暴行と、その終わりのない影響を浮き彫りにする。
【冒頭写真キャプション】
<母アネット>(前回取材時)両親と兄たちを目前で次々と撲殺された。度重なる拷問と性的暴行の末に集団墓地に投げ捨てられ、死体の山の中からはい出した。(現在)襲われたときにマチェーテ(山刀)で切り付けられたことに起因するひどい頭痛に今も悩まされる。でも前回の取材で当時の体験を吐き出したことで、少しずつ同じ体験をした者同士で話し合えるようになってきた。もうすぐ大学を卒業する息子を見ると、彼には未来があると思えて安心できる。
<息子ピーター>母から当時のことを聞いたのは8年前。 寝室に腰掛けて話してくれたが、ものすごく悲しそうで、聞いた話は忘れることにした。しかし友人や姉のようでもある母との関係はとても良く、義父も自分を愛してくれたため、やがて自分の出自のことは自由に話せるようになった。現在は大学で土木工学を学んでいる。地域の子供を代表して大統領に会ったこともある。将来には希望を持っており、ルワンダの発展に尽くしたいと思っている。
<母オデット>凄惨な性暴力の犠牲者であり、その結果の出産を地域社会は許さず、恥とされ追放された。(現在)12年前はもう少しでホームレスになるところだったが、今は傷も癒えて仕事をしており、結婚して女児を出産した。暴行されたときに罹患したHIVの治療も受けている。息子のことは愛しているが関係はうまくいっていない。特に私の結婚について不満だったようだ。彼が生まれた経緯を話したのは2015年。そのときは同情してくれたが、今は私と夫に対しての敬意は感じない。大学に入った息子は飲み歩いていると聞き失望している。
<息子マーチン>そのことを聞いたとき、受け入れるのには時間が必要だと感じた。実の父が殺人者で強姦魔だということは恥だし、傷ついた。自分も同じように暴力的性向を受け継いでいるとみる人もいて、それもまた傷ついた。でも母が出生について話してくれて、おそらく関係は修復に向かうと思う。自分がどのように生まれたのかずっと疑問だったことが仲たがいの主な原因だったから。母が中絶せずに犠牲を払って自分を育ててくれたことは感謝している。愛してくれたことも。
<母バーナデット>大勢の民兵に暴行された上、棍棒で足を粉々になるまで打ち砕かれた。(現在)昔は私の兄や親族などが暴行のことで私を侮辱したり、「人殺しの子供」と息子を呼んだりしたが、今はそれもなくなった。息子に出生の由来を告げたとき彼は大変なショックを受けていた。ツチの虐殺者がどんなふうだったか、しきりに聞きたがった。幸いにも息子は地域でも評判の人格者に育った。でも私の人生は虐殺がなければもっと良いものになっていたはず。
<息子フォースティン>13歳のときに、母がレイプされ自分が生まれたことを知った。心臓を刺されたようにつらかった。一度牢獄にいる父に会いに行ったが、私と話したがらなかった。その後、出所した父が許しを乞いに来た。母と私は考え、許すことにした。寝る前に時々、なんでこんなふうに生まれてきたのかと考える。父と自分が似ていると思われないように、注意深く、善く生きなければと自分に言い聞かせている。
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