コラム

大阪万博、大丈夫?予言されていた「荒井注」化の危機と見えてきたイヤ~な着地点

2024年03月09日(土)18時48分
もし岡本太郎が「リング」をデザインしたら?

今回のAIイラスト:もし岡本太郎が「リング」をデザインしたら? AI GENERATED ART BY NEWSWEEK JAPAN VIA STABLE DIFFUSION

<新聞15紙を読み比べるプチ鹿島さんが万博のプロセスを検証すると、様々なグダグダの先に「東京五輪」の亡霊が浮かぶホラー展開が見えてきました>

物事は「プロセス(過程)」こそ大事。結果オーライでいいなら民主主義だって多数決だけでよくなってしまう。だから途中経過や時系列をしっかり味わう。それはニュースの見方でもあるはず。その意味で大阪・関西万博は今まさにプロセスの「博覧会」中。万博開催までの経過、おさらいが欠かせないのである。

例えば万博招致に注力してきた日本維新の会の振る舞いはどうだったか。そもそも「維新は万博を『成長の起爆剤』と訴え、大阪を含む関西を中心とした党勢拡大にもつなげてきた」(読売新聞、昨年9月24日)。

私も思い当たるフシがある。昨年4月の統一地方選で大阪の選挙区に密着したのだが、維新の候補者たちが党の実績として万博誘致を誇らしげに語っていたことを覚えている。

しかし昨夏ごろから、税金も投入されている建設費の増加やパビリオンの建設遅れが指摘され始める。すると、「政府・自民と維新の責任の押し付け合いが目立ち始めた」(毎日新聞、昨年9月17日)

そんなバカな。でもこういう変遷を見ておくのが大事なのだ。昨夏からの記事をもう一度見てみよう。

「荒井注万博」の懸念がまさかの...


「海外パビリオン申請ゼロ 万博協会、建設代行提案」(毎日新聞、昨年7月14日)。

この時点で建設申請ゼロという事態に万博協会には焦りの色が見えるという。私は「荒井注カラオケボックス事件」を思い出した。かつてザ・ドリフターズの元メンバー、荒井注さんが建てたカラオケボックスは入り口が狭すぎて肝心のカラオケ機材が搬入できず伝説となった。大阪万博も本番がどうなるか分からず荒井注万博のにおいがする、と昨年8月に「文春オンライン」に書いた。

すると約半年後の先日、こんなニュースがあった。

「万博のシンボル"大屋根リング"めぐり...建設業界トップが新たな懸念『リングで搬入に制約生じる』」(TBS、2月22日)。

会場の周囲にリング(大屋根)が完成すると、建設用車両の通り道が狭まり、パビリオン建設が遅れる懸念があるという。ああ、まさに荒井注のカラオケボックスではないか。私の懸念は的中してしまったのか?

プロフィール

プチ鹿島

1970年、長野県生まれ。新聞15紙を読み比べ、スポーツ、文化、政治と幅広いジャンルからニュースを読み解く時事芸人。『ヤラセと情熱 水曜スペシャル「川口浩探検隊」の真実』(双葉社)、『お笑い公文書2022 こんな日本に誰がした!』(文藝春秋)、『芸人式新聞の読み方」』(幻冬舎)等、著作多数。監督・主演映画に『劇場版センキョナンデス』等。 X(旧Twitter):@pkashima

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪肝に対する見方を変えてしまう新習慣とは
  • 3
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず出版すべき本である
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    ロシア軍高官の車を、ウクライナ自爆ドローンが急襲.…
  • 9
    ロシア軍が従来にない大規模攻撃を実施も、「精密爆…
  • 10
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 9
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story