コラム

日本に必要なワクチン接種の加速、アメリカはどうやった?

2021年05月20日(木)18時20分

コロナ禍で日本が抱えている問題や課題、どれもワクチン接種が解決への近道となる。つまり、ワクチン接種が日本一の急務だ。他の法案よりも、公共事業よりも、天かすの買い出しよりも一大事な仕事だ。それが遅れているにもかかわらず、それに取り組む政府の必死さが伝わらない。

もちろん、ワクチンを輸入に頼っている日本だから、EUの輸出規制も遅延の要因の一つ。しかし、輸入が遅れたことは、準備の期間が伸びたと意味するだけ。配分や配布の制度整備、人員や会場の確保、電話回線の増設、オンライン予約システムの開発など、今ネックとなっている過程は全部事前に整えるために十分時間があったはず。なんでできていないんだろう。

今の状況を見ていると、「一緒に映画を見に行こうと、迎えに向かったときに渋滞に巻き込まれ彼女の家に到着が遅れた! にもかかわらず、彼女はまだ出かける支度ができていない......」という、青春時代のじれったいデートを思い出す。

ワクチン接種でドタバタしているのは日本だけではないが、日本ほど遅い国は少ない。 各国の接種率を比較したニューヨークタイムズによると、日本では100人中5.6人が1回ワクチン接種を受けている。179か国中で103位に当たる、恥ずかしいペースだ。101位にバングラデッュ。102位にジンバブエ。その次、103位に日本がランクイン。素敵な国だと思うけど、ジンバブエの友達から「日本は大変だね、頑張ってね」と励まされる立場になると思わなかったね。

アメリカから何を学べる?

アメリカもワクチン接種の出だしでは、配分、配給、保存、予約などで問題はあったが、結局早くワクチン接種が成功したことから何が学べるのか?まずはリーダーシップの大切さ。トランプ政権は昨年末までに2000万人の接種を目指していたが、具体的な対策は発表されなかっただけではなく、存在もしていなかったということがのちに発覚。当然、目標は達成できず、トランプ退任時に1回でも接種した人はまだ1500万人しかいなかった。

一方、バイデン大統領は就任した日に中央政府が配給を仕切る「ワクチンファースト」なスタンスに切り替えた。バイデンは「有事だ!」と総力戦を宣言し「100日で1億人」という目標に向けて、就任当日に10ものコロナ関連大統領命令を著名し、新たなコロナ対策案を発表。それもきめ細かく198ページにわたってつづられていた。とても斬新だった。それまで大統領からの情報発信はほとんどツイートだったからね。

2つ目は、いい意味でのおおざっぱさ。どんな公共事業にも初期段階でトラブルは起きるが、試行錯誤をしながら加速を目指す現場の人を応援する姿勢が大事。日本での「架空の番号で予約ができた?!けしからん!」と叩く姿勢に対し、アメリカの人々はオレゴン州でワクチン輸送中に吹雪に巻き込まれ足止めを食らった公衆衛生当局の職員が、車から降りて、近くの車に乗っている人に声をかけてその場でワクチン接種を行ったことを大絶賛していた。完璧主義にならずに、あの手この手でとにかく全力でワクチン接種進めるのが大事。

日本もできる国だ。国民は勤勉で正直。まじめで倫理的。リーダーシップと現場の行動力が揃えば、また世界に誇るサクセスストーリーが描けるはず。全力投球でワクチン接種を加速して、また「日本モデル」をアメリカの友達に自慢させてほしい。根は傲慢だからね、僕は。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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