コラム

戦うべき敵は欧米コンプレックス

2020年04月08日(水)12時48分

そこで、新型コロナがやってきた。

欧州の国々はすべてできることをやっている。イギリスも全力だ。ニューヨークはこの世の終わりのような有様だ。ロンドンやニューヨークからの報告が日本にもやってくる。ネット時代である。そして、ニューヨークの人々も、日本の姿に目を疑う。あのプリンセスダイヤモンドで崩壊していた国が、感染者数も欧米に比べれば圧倒的に少ない。ましてや死亡者となると桁があまりに違う少なさだ。そして、人々は、ロックダウンにもならず、ただの自粛で、いつもよりはすいているとは言え、彼らの感覚では満員の電車に乗って通勤している。そして、批判をする。

米国に住む日本人たちも警鐘をならす。そんなことしていると、ニューヨークよりもひどいことになるぞ。ニューヨークの一流の病院ですらこうなんだ、日本で同じようになったら医療崩壊はこの次元ではない、とニューヨークの日本人の医者も警告する。

そして、東京に住む日本人のインテリたちは、欧米のニュースを周りよりは感度高くキャッチし、警告をならす。米国ではこうやっている。イギリスでは、ドイツでは、と警鐘を鳴らし、日本がいかにだめか説教する。政府と大衆に向かって、愚かだからわからないだろうが、先進国はこうなっている。日本だけがこんなことをしている、とインテリ風に警鐘を鳴らす。

コロナ対策で成功しているのはアジアの国々

もう欧米コンプレックスはやめよう。

今回のコロナ対策で、成功しているのは、アジアの国々だ。間違いなく台湾は大成功で、韓国は当初は危機かと思われたが、見事に克服した。中国は震源地で賛否はあるが、当初の懸念よりは遥かに小さいダメージで乗り切った。そして、日本も確認感染者数、死亡者数においては圧倒的に少ない。そして、感染が広がったのが先であるから経験値高い。

なぜ、アジアに学ばず、欧米の例を見て、インテリたちがパニックになるのか。むやみにロックダウンというのか。

しかも、エビデンスベースとかなんとか、ついこの前まで言っていたのに、成功した例のないロックダウンを推奨するのか。だらだらするよりも一気に厳しく封鎖して解決したほうが経済にとってもいい、と自信満々に緊急事態宣言をなかなかしない、ロックダウンは絶対にしない政府を責めるのか。

ロックダウンすれば一気に終息するなど、根拠がない。前例もない。エビデンスは勿論ない。イメージだけだ。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story