最新記事
シリーズ日本再発見

日本に観光に来た外国人がどこで何をしているか、ビッグデータが明かします

2016年08月19日(金)11時12分
西山 亨

「インバウンドインサイト」PROプランの画面(一部)

<訪日外国人がどこで何に感動し、どう行動しているのかについては現在、情報の収集・分析が十分とはいえない。そこで活況を呈しているのが、ビッグデータを活用して訪日外国人の動向を探るサービス。SNS投稿を解析したり、Wi-Fiアプリの利用から位置情報を得たり、果てはそのWi-Fiユーザーにプッシュ配信で情報を発信したり......。インバウンドビジネスの最前線を追った>

【シリーズ】日本再発見「日本のおもてなし施策最前線」

 空前のブームを引き起こしている「ポケモンGO」だが、8月上旬、ポケモンが手に入る人気スポットやレアポケモンの出現情報を地図上に表示する「Pokémon GO Insight」というウェブサービスがリリースされた。

 これは「ポケモンGO」ユーザーのSNS投稿を解析することで、ポケモンが出現する場所を特定し、その情報を提供するというものだ。これまで、「ポケモンGO」の開発元であるナイアンティックのサーバーなどへアクセスし、スポット情報を提供していたサードパーティーによるサービスはいくつかあったが、ナイアンティックは7月末に自社サーバーなどへのアクセスをシャットダウン。これにより「Pokémon GO Insight」がさらなる注目を集める格好となった。このウェブサービスを運営しているのが、位置情報のデータ解析を得意とする東京のナイトレイである。

 2011年に設立されたナイトレイは、スマートフォンから発信されるSNSへの投稿を収集・解析してデータ化。その解析結果をさまざまな形で企業などへ提供することを主な業務としている。それまでは日本人によるSNSへの投稿を解析していたが、2015年7月に、訪日外国人の位置・移動情報に特化したSNS解析サービス「インバウンドインサイト」をリリースした。現在では、インバウンドビジネスの支援サービスとして急成長しているという。

【参考記事】SNSとビッグデータから生まれたソウル市「深夜バス」

訪日外国人のSNS投稿内容を地域ごとに可視化

「多くの外国人が日本へ来ているのに、日本人は彼らがどこで何をしているのかを詳しくは知らない」と、ナイトレイの石川 豊・代表取締役社長は言う。「そんな状況では、訪日外国人に対してビジネスを仕掛けても上手くいかないのではないか。それなら私たちが外国人の日本での足取りを解析してデータとして提供するので、インバウンド対策をしっかりやりましょう、というのが『インバウンドインサイト』を立ち上げた背景です」

 訪日外国人がSNSへ投稿した内容をリアルタイムで解析することで、行動場所や周遊ルート、クチコミ内容、国籍(15カ国)、性別などをデータベース化し、ウェブ上で分析できるツールと解析結果データとして提供する。注目したいのは、ツイッターと、中国語圏で人気のウェイボー(微博)とを解析対象のSNSとしている点だろう。共に投稿内容はオープンデータとして公開されているものなので、問題なくデータの収集と解析ができるというわけだ。

 石川さんの話によると、PROプラン(下記参照)で解析対象としているのはSNSで積極的に発信している訪日外国人で、2016年8月時点で月間約2万2000~2500人いるという。月間の訪日外国人数が約190万人だとすると、その1パーセント強にあたる。

「SNSに投稿されないことには解析できませんし、サンプル数が圧倒的に多いわけではありません。ただし、『インバウンドインサイト』の一番の強みは、例えば江の島に遊びに来たタイの人が何に感動したのかといったことが分かることなのです」と、石川さんは力説する。投稿のクチコミ内容は、機械翻訳とはいえ日本語で表示され、投稿画像も見ることができる。それは統計データのマップや数字からは見えない訪日外国人が感じた生の声であり、そこに大きな価値があるのだという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中