日本に観光に来た外国人がどこで何をしているか、ビッグデータが明かします
「インバウンドインサイト」PROプランの画面(一部)
<訪日外国人がどこで何に感動し、どう行動しているのかについては現在、情報の収集・分析が十分とはいえない。そこで活況を呈しているのが、ビッグデータを活用して訪日外国人の動向を探るサービス。SNS投稿を解析したり、Wi-Fiアプリの利用から位置情報を得たり、果てはそのWi-Fiユーザーにプッシュ配信で情報を発信したり......。インバウンドビジネスの最前線を追った>
【シリーズ】日本再発見「日本のおもてなし施策最前線」
空前のブームを引き起こしている「ポケモンGO」だが、8月上旬、ポケモンが手に入る人気スポットやレアポケモンの出現情報を地図上に表示する「Pokémon GO Insight」というウェブサービスがリリースされた。
これは「ポケモンGO」ユーザーのSNS投稿を解析することで、ポケモンが出現する場所を特定し、その情報を提供するというものだ。これまで、「ポケモンGO」の開発元であるナイアンティックのサーバーなどへアクセスし、スポット情報を提供していたサードパーティーによるサービスはいくつかあったが、ナイアンティックは7月末に自社サーバーなどへのアクセスをシャットダウン。これにより「Pokémon GO Insight」がさらなる注目を集める格好となった。このウェブサービスを運営しているのが、位置情報のデータ解析を得意とする東京のナイトレイである。
2011年に設立されたナイトレイは、スマートフォンから発信されるSNSへの投稿を収集・解析してデータ化。その解析結果をさまざまな形で企業などへ提供することを主な業務としている。それまでは日本人によるSNSへの投稿を解析していたが、2015年7月に、訪日外国人の位置・移動情報に特化したSNS解析サービス「インバウンドインサイト」をリリースした。現在では、インバウンドビジネスの支援サービスとして急成長しているという。
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訪日外国人のSNS投稿内容を地域ごとに可視化
「多くの外国人が日本へ来ているのに、日本人は彼らがどこで何をしているのかを詳しくは知らない」と、ナイトレイの石川 豊・代表取締役社長は言う。「そんな状況では、訪日外国人に対してビジネスを仕掛けても上手くいかないのではないか。それなら私たちが外国人の日本での足取りを解析してデータとして提供するので、インバウンド対策をしっかりやりましょう、というのが『インバウンドインサイト』を立ち上げた背景です」
訪日外国人がSNSへ投稿した内容をリアルタイムで解析することで、行動場所や周遊ルート、クチコミ内容、国籍(15カ国)、性別などをデータベース化し、ウェブ上で分析できるツールと解析結果データとして提供する。注目したいのは、ツイッターと、中国語圏で人気のウェイボー(微博)とを解析対象のSNSとしている点だろう。共に投稿内容はオープンデータとして公開されているものなので、問題なくデータの収集と解析ができるというわけだ。
石川さんの話によると、PROプラン(下記参照)で解析対象としているのはSNSで積極的に発信している訪日外国人で、2016年8月時点で月間約2万2000~2500人いるという。月間の訪日外国人数が約190万人だとすると、その1パーセント強にあたる。
「SNSに投稿されないことには解析できませんし、サンプル数が圧倒的に多いわけではありません。ただし、『インバウンドインサイト』の一番の強みは、例えば江の島に遊びに来たタイの人が何に感動したのかといったことが分かることなのです」と、石川さんは力説する。投稿のクチコミ内容は、機械翻訳とはいえ日本語で表示され、投稿画像も見ることができる。それは統計データのマップや数字からは見えない訪日外国人が感じた生の声であり、そこに大きな価値があるのだという。