トランプのCIA批判派封じは、陰謀論のQAnonが待つ「一大決戦(ストーム)」の始まりか?
当然のように、トランプ政権は公式にはQAnon との関係を認めていない。8月1日、記者会見でトランプ氏がQAnon を支援しているかと問われたホワイトハウスのサンダース報道官は「大統領は他人への暴力を扇動する者を非難する」と述べるにとどまり、明言を避けた。
とはいえ、少なくとも結果的には、トランプ政権の方針はQAnonを満足させている。先述のように、トランプ政権はブレナン氏に続き、機密情報のアクセス権限を剥奪する範囲を広げる構えだ。これが反トランプ陣営のいう「報復」であってもなくても、QAnon 支持者の間で「ストーム」への期待を呼び起こしていることは間違いない。
トランプ氏は自らへの批判を「魔女狩り」と呼び、逆に政敵を非難してきた。今後、政治的な失点が重なり、それをリカバリーするためにトランプ政権がQAnon の求める「腐ったエリートの一掃」をさらに加速させた場合、それはトランプ政権自身による「魔女狩り」になり得る。それは陰謀論が、部分的であれ、現実をのっとることを意味するのである。
筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。他に論文多数。
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