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スペインメディアが中立を捨て、自己検閲を行い始めた
「言葉は鳥かごの中に閉じ込められない」
スペイン中央政府がTV3とカタルーニャ・ラジオへの圧力の手を緩めることはない。11月11日には、バルセロナで行われた政治犯釈放を求める参加者75万人(バルセロナ警察発表)にのぼる大規模デモの中継に対して、与党・国民党が「中立的な報道にならない」と難癖をつけ、TV3とカタルーニャ・ラジオによるデモ中継禁止をスペイン選挙管理委員会へ事前に申し入れた。
結局、国民党の申し入れは不採択となり、両メディアはデモを報道した。中継後、選挙管理委員会によって公正な報道だったと結論付けられたにもかかわらず、スペイン政府は「独立派の煽動だ」と非難を続けた。
事態をより深刻化させているのは、首都マドリードを拠点とするマスメディアがスペイン政府に追従し、カタルーニャの公共メディアへの「言論規制」に対して賛成を示唆していることだ。スペインのインテリ中道左派を代表するエル・パイス紙でさえ、TV3を「独立派のプロパガンダ道具」と呼び、「TV3の将来は次回(12月21日)の選挙の報道内容にかかっている」と、国民党と同様の脅し文句を発信し始めている。
従来、エル・パイス紙は、国民党寄りの他の新聞各社とは一線を画していたが、カタルーニャの住民投票を機に、他社と変わらぬ論調が目立っている。この2カ月間で、エル・パイス紙の「イデオロギー規制」を理由に、30年以上も寄稿していた権威ある歴史家で大学教員のジュアン・B・クリャや、著名コラムニストのフランセスク・サレス、作家のジュアン・フランセスク・ミラ、詩人のアンリック・ソリアなど、各界で知名度の高い論客がエル・パイス紙から次々と去っている。
イギリス人ジャーナリストで映画『インビクタス/負けざる者たち』の原作者ジョン・カーリンも、2004年からエル・パイス紙に寄稿していたが、お役御免となった1人。投票後のスペイン国王のスピーチやスペイン警察の暴力を批判し、「(マリアノ・)ラホイ首相は、プッチダモン州首相を裏切り者と非難するが、政治的衝突が暴力を生み、もしカタルーニャが独立を成し遂げたなら、裏切り者はラホイになる」と、英タイムズ紙に書いたことが原因だ。
このように、スペインのジャーナリズムは、中央政府によるカタルーニャへの「言論規制」圧力と自己検閲によって危機的状況に陥っている。
カタルーニャの独立運動は、スペイン人たちの心の中に眠っていた「愛国心」に火を付けた。自国スペインを分裂させる攻撃と受け取っているのかもしれない。ジャーナリストも所詮は人の子だ。9.11同時多発テロ事件の後、アメリカのジャーナリズムに愛国心の風が吹いたのと同様、スペインのジャーナリズムにもそれに似た現象が起こっているように見える。
しかし、この「愛国心」が「憎悪」に変わらないことを祈る。「憎悪」に火が付けば、暴力も戦争も正当化されてしまう。そのためにも感情に訴えず冷静かつ自由な議論が不可欠だ。言論を封じることは非常に危険である。
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