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スペインメディアが中立を捨て、自己検閲を行い始めた
カタルーニャ・ラジオの朝の顔、モニカ・タリバスもまた、国民党の「言論統制」のターゲットになった。理由は、11月30日の彼女の番組で、住民投票の際、警察が市民に対して振るった暴力についての真相究明調査は行わないとしたスペイン政府を「批判」したこと。
国民党は彼女の報道に対して、「12月21日の選挙に向けて特定の候補者に利益になるように仕向けた操作的で偏向した情報」だとして、またしても選挙管理委員会に陳情を申し立て、カタルーニャ・ラジオへの「制裁」を求めた(※)。
翌12月1日、「ボン・ディア! ダスペルタ、カタルーニャ」と、ラジオからいつものタリバスの声が聞こえてきた。
「7時です。カタルーニャ・ラジオ『朝』です」
タリバスは、国民党からの非難に対する答えとして、自分の言葉を使わず、アルベール・カミュ、ノーム・チョムスキー、ジョージ・オーウェル、ベンジャミン・フランクリンといった著名人による言論の自由の大切さを述べた名言を朗読した。
なかには、フランコ独裁政権末期にファシズム反対の学生運動に参加したカタルーニャの女性ジャーナリストであり作家である、故ムンサラット・ロッチの言葉もあった。
「言葉は鳥かごの中に閉じ込められない。言葉は勝手に飛んで行く」
タリバスは、「これらの名言を暗闇を照らす光とし、公共メディアとしてこの光を守っていく努力を続ける」と述べ、いつも通りの短い音楽が、彼女の番組をリードしていく。
窓の外はまだ薄暗く、街灯がぼんやりと闇を照らしている。こうしてまた、カタルーニャの1日が始まった。
※12月7日、選挙管理委員会は、タリバスの報道に対する国民党の陳情を「実際に起こっている政治ニュースを述べており、その報道に付随できうる範囲の批判的トーンを越えるものではない」として退けた。
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