ハンブルクG20サミットは失敗だったのか
日EU経済連携協定大枠合意の意味
G20前に渡欧した安倍総理は7月6日の日EU首脳協議でEUとの経済連携協定(EPA)と戦略的パートナーシップ協定(SPA)の大枠合意を確認した。4年前に交渉が開始されてからさまざまな困難にぶつかり、最終的な局面でも農産品などで難しい局面が続いたが、アメリカが合意済みのTPPに背を向け、保護主義的な姿勢を強める中で、G20に間に合わせることができ、世界に向けて自由貿易を推進することのメッセージを日本とEUが出せたことの意義は大きい。EPAは単にモノの関税を下げるだけの自由貿易協定であるのみならず、モノ以外の市場アクセスも自由化し、貿易を取り巻く制度・ルールなども包括的に含めている質の高い協定である。
さらに政治面でのSPAは、日EUが平和と安定のために宇宙、海洋、サイバー、環境、エネルギー、保健、テロなど多様な課題での恒常的な協力の促進と対話を制度化するものである。
中国をはじめとする諸国の台頭によって日本の比重は低下しているものの、共通の価値を基盤として深いレベルでの協力が単なるお題目でなく可能であることを示すことに成功したEPAとSPAの締結は、G20のみならず世界へのメッセージとして十分意味のあるものであったと評価することができよう。
日EU首脳協議がG20に会わせて開催されたように、国際政治の場では政治的スケジュールにも意味がある。G20やG7があることによって、そこにいたる日程がさまざまに拘束されてくる。そしてそのことが、何もなければなかなか動きにくい問題で妥協を可能にしたりもするのである。この意味でも国際制度の意義を再確認してみる必要があろう。
この筆者のコラム
ハンブルクG20サミットは失敗だったのか 2017.07.26
揺れる米独関係 2017.06.02
イギリス離脱交渉の開始とEUの結束 2017.05.08
地方選挙から見るドイツ政治:ザールラント州議会選挙の結果 2017.03.29
シュルツSPD首相候補の登場はドイツを変えるか? 2017.02.27