深読みしても無駄? 究極的に変な映画、森田芳光『家族ゲーム』は実験とエンタメの融合作
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ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN
<伊丹十三演じる父親の目玉焼きの食べ方、家庭教師を演じる松田優作の奇妙な登場シーン──意味不明なシーンだらけなのに、その全てが作品と調和している。それも見事に>
大学の映画研究会に所属して8ミリ映画を撮っていた頃、数年上の世代は自主制作映画世代とよく呼ばれていた。大手映画会社に所属して助監督や制作進行助手から始めて監督を目指すというコースがそれまでの選択ならば、8ミリや16ミリで撮った低予算の映画を発表してから商業映画に監督として進出するというコースを選択した世代だ。この時期に急激に増えた理由の1つは、8ミリ映画のサウンドトラックが開発されて同時録音が可能になったからだ。
もちろん、商業映画に進出するためには、その前に発表した自主制作映画が話題になることが前提だ。
8ミリで撮った自主制作映画『ライブイン・茅ケ崎』が話題になった森田芳光の商業映画第1作『の・ようなもの』は強烈だった。ストーリーらしきものは特にない。ふわふわと捉えどころがない。主演の伊藤克信も変な俳優だ。いやあれは演技なのか。演じるキャラクターに自己の内面を同一化させるスタニスラフスキー・システムの真逆。演技ではなく伊藤そのものが放つ奇妙な存在感が、映画の不思議なリズムや質感と絶妙にマッチしていた。
大ヒットとまではいかなかったが『の・ようなもの』が一部で熱狂的に支持された森田は、その後にアイドル映画を撮って監督としての懐の深さを証明し、満を持すかのようなタイミングで、究極的に変な映画である『家族ゲーム』を発表する。
伊丹十三演じる父親の目玉焼きの食べ方とか、(誰もが言及する)横に長い食卓とか、家庭教師を演じる松田優作の奇妙な登場シーン(横顔がフレームいっぱいに映されていて周囲の人の声だけが延々と続く)とか、実験映画的な要素をいちいち取り上げて詮索しても意味がない。
観る側は時としてシーンやカットを深読みするが、撮る側としてはそれほど意味付けしていない場合が多い。確かにラストの大混乱となる食卓のシーンは『最後の晩餐』をモチーフにしていると思うが、仮にそうだとしても、たぶんそれ以上の意味はない。少なくとも家庭教師は家族にとって救世主ではないし、そんな設定には映画的に豊かな意味はない。
ほかにもシュールで意味不明なシーンは多い。でもそれが全て作品と調和している。見事にはまっている。そのバランスは奇跡的だ。
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