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かんぽ生命不正販売、3人謝罪会見が象徴する「責任の分散」という要因
Kim Kyung-Hoon- REUTERS
<以前から不正の認識があったはずなのに、なぜもっと早く止められなかったのか。不正を働く企業には共通する心理的な要因がある>
今年になって発覚した日本郵政グループの「かんぽ生命保険の不正販売」の問題は、なぜもっと早く止められなかったのか。昨年世間を騒がせた「スルガ銀行の不正融資」の問題は、なぜもっと早く誰かがやめようと言い出さなかったのか。
これら不正を働く企業には共通する心理的な要因がある。それが「責任の分散」だ。一体どういう意味なのか。
「責任の分散」は企業の盛衰を分けるキーワード
不祥事を起こし、それを止められず、企業を衰退させるのも人。逆に、顧客満足を増幅させ、企業を繁栄させるのも人である。経営層から現場社員まで、そこで働く人の心理状態に注目する必要がある。
「責任の分散」を理解してもらうために、心理学の「傍観者効果」から説明しよう。
「傍観者効果」とは、社会心理学の用語で集団心理の1つだ。他者に対して援助すべき状況や、ある事件に対して解決すべき状況であるにもかかわらず、自分以外の傍観者がいる場合には、行動が抑制されてしまう心理を指す。これは、傍観者が多いほどその効果は高くなる。
「傍観者効果」が起こる原因は、主に3つある。
1つ目が「責任の分散」。自分が行動しなくても、誰かが行動してくれるであろうと考えることだ。例えば火事を見ても、誰かが119に電話してくれるだろう、自分が消火器を担いで火に飛び込まなくても、そのうち消防車が来て消してくれるだろうと考えてしまう。
見ている全員が「誰かが何とかしてくれるだろう」と思うと、みんなが傍観者となり、事態が最悪のところまで進んでしまう。心のどこかに、他者と同じ行動なのだから責任や非難が自分に集中することはなく、分散されるだろうと考えてしまうのだ。
残りの2つは、「多元的無知」と「評価懸念」である。
例えば、道で倒れている人を見かけた場合、自分は心配になったが、誰もその人を助けていないとしよう。
「多元的無知」とは、周囲の人が何もしていないのだから、援助や介入に緊急性を要しないだろうと誤って判断してしまうこと。
「評価懸念」とは、周囲からの評価が気になって、結局行動できないことだ。他の人から「寝ているだけなのに救急車まで呼んで、大げさな人だ」と思われないだろうか、「私は寝ているだけだ」と本人から文句を言われないだろうか、と行動への評価を考えてしまい、結局行動に移せないことを指す。
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