シャープ買収で電子立国ニッポンは終わるのか
要するに日本の電機メーカーが衰退した原因は、2000年代半ばに世界経済の趨勢を見誤り、中国など新興国の市場に力を入れず、むしろ日本国内に力を入れたからだ、というのが私の説です。パナソニックはようやく最近になって中国での売上比率が13%、その他アジアが13%まで上昇してきましたが、それでも全体の73%が日米欧です。
外国企業を見ますと、例えばアップルは高級品のイメージがありますが、2015年の売上の24%は中国で、日本は7%でした(2015年)。日米欧での売上は全体の68%で、パナソニックよりも新興国に重きを置いています。サムスン電子が新興国を重視してきたことはよく知られていますが、実際2014年の売上のうち16%が中国、20%がその他のアジアとアフリカでした。
ちなみにシャープは2012年3月期までは日本国内での売り上げが全体の5割以上を占めて非常に高かったのですが、それ以降は日本での売り上げが急減する一方、2014年以降、中国での売り上げが増え、2015年3月期では中国41%、日本35%と逆転しています。これは経営危機のなかで中小型液晶パネルなどを中国で必死に売った結果だと思われます。経営危機に陥ってから慌てて中国シフトを図るのではなく、もっと前から戦略的に中国や新興国市場に取り組んでいればあるいは今日の危機はなかったのではないかと思います。
EVと太陽電池に「過剰生産能力」はあるのか? 2024.05.29
情報機関が異例の口出し、閉塞感つのる中国経済 2024.02.13
スタバを迎え撃つ中華系カフェチェーンの挑戦 2024.01.30
出稼ぎ労働者に寄り添う深圳と重慶、冷酷な北京 2023.12.07
新参の都市住民が暮らす中国「城中村」というスラム 2023.11.06
不動産バブル崩壊で中国経済は「日本化」するか 2023.10.26
「レアメタル」は希少という誤解 2023.07.25