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アリババ「米中欧日に次ぐ経済圏を構築する」大戦略とは何か
物流では「世界どこでも72時間以内に配達」目指す
アリババが構築しようとしているスマート物流ネットワークは、巨大そのものである。アリババグループは、大きくEC関連事業、金融事業、物流事業の3ブロックに分かれている。このうち物流事業を担うのが「菜鳥」という会社。ジャック・マー自身が会長を務めている。
創業は2013年とまだ浅いが、そこに投じられている資金はとてつもない額だ。富士通総研の金堅敏氏のレポートによれば、「投資額は、フェーズ1で1000億元、フェーズ2で2000億元を合わせて3000億元(約5兆円)に達すると見込まれ、5~8年かけて一日平均で300億元(年間で10兆元、約200兆円)のEC取引を支え、24時間配達可能な全国を張りめぐるスマートロジスティックスネットワークを構築しようとしている」(研究レポート「中国のネットビジネス革新と課題」)という。
そして現在、ジャック・マーのビジョンはさらにそれを超えるスケールに広がっている。「5年以内に中国の国内はどこでも24時間以内、世界どこでも72時間以内に配達できる」物流ネットワークを構築すると公言し、そのために菜鳥は、日本では日本通運と、米国では郵政公社と組むなど、国外の事業者との連携を着々と進めている。
こうした動きからは、アマゾンと比較してアリババが他のプレイヤーに対して友好的であることもわかるだろう。日本におけるアマゾン対ヤマト運輸の戦いに見るように、アマゾンは協力会社をどこか「業者扱い」するようなところがあるが、その点、アリババはビジネスパートナーとして尊重する態度を示しているようだ。世界どこでも72時間以内に配達できる」デリバリーを実現するポテンシャルを持っているのは、グローバルのビジネスパートナーたちと上手に協業できるアリババなのではないかと筆者は考えている。
アリババの世界進出を阻むものは?
もちろん、アリババの世界展開を阻むリスクにはさまざまなものがある。たとえば、上場企業と非上場企業がグループ内に混在していることから、コーポレートガバナンスの問題や、会計の質の問題、利益相反の可能性があること。
先進国の上場企業であれば、上場企業と非上場企業が数多く混在し、どのような事業をどの企業でやっているのかが不透明であることは許容されないだろう。今後アリババグループの企業が上場を実現していくにあたっては、グループ全体のコーポレートガバナンスに対する圧力が強まってくると考えられる。
以上を踏まえると、アリババグループの全容は不透明といわざるを得ない。ジャック・マー自身は「アマゾンはすべて自前でやろうとする帝国だが、アリババはプラットフォームだ」と主張しているが、帝国なのはむしろアリババではないか、という印象も与えかねない状況だ。
中国ブランドが先進国に通用するのか、という問題も未知数である。加えて、偽造商品の問題もある。とくにCtoCの「タオバオ」上ではコピー品や粗悪品などが売られていると指摘が相次ぎ、欧米の有名ブランドからは「売られている商品の8割が偽物」という強烈な批判も出た。
これを受け、アリババも対策を急いでいる。中国のアリババから世界のアリババへと飛躍するには、こうした悪評を改善して安全性を高め、顧客たちと信頼関係を築く必要があることは、アリババも理解しているのだろう。
ジャック・マー自身、米国通商代表部(USTR)からの批判に対し、「偽造品はアリババのガンである」と答え、当局と協力しつつビッグデータ等も活用しながら改善していくとしている。前述した、PwCらと構築しているブロックチェーンを活用した流通管理システムは、その突破口になり得るものといえるだろう。
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