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アリババ「米中欧日に次ぐ経済圏を構築する」大戦略とは何か
国有化リスクか、「中国の国益」と見なされるリスクか
そして、中国企業であるアリババ最大のリスク要因は「中国リスク」だ。習近平国家主席は中国で新秩序を推し進め統制を強めている。そして同国の産業政策は、基幹産業は国営企業が担い、その他消費市場に近い産業及び新規産業は民間企業が担うという役割分担。その一方で、もともとは中国の基幹産業以外の業種と見なされたアリババが担ってきた事業は、皮肉にも国有企業が担うべきであるとされる基幹産業にまで育ってきている。
アリババはこれまで述べてきた事業領域以外でも、配車サービスなどのシェアリングビジネスでは独占的なマーケットシェアを確保している。自転車シェアリングでは、すでにアジアや欧州に進出し、米国や日本でも展開しようとしている。中国内で帝国と化したアリババ最大のリスクは、国有化されるリスクや中国政府からのコントロールが強まるリスクではないだろうか。
このような雰囲気を察知してか、最近ではジャック・マーもかなり中国政府に配慮した発言をするようになってきているようだ。もっとも、中国政府への忠誠心を明らかにしていくことは先進国への本格進出の大きな障害になってしまう......。国有化のリスクか、あるいは中国政府に迎合せざるを得ない展開を迫られ、「世界をよりよい場所にする」企業ではなく、実際には「中国の国益だけを考える」企業と見なされてしまうリスクが顕在化してくるのか。
今はまだこのリスクは顕在化していないが、中国の巨大な市場と政府の後押しを背景に急成長できたアリババだからこそ、アリババ自身がこれから対峙していかなければならない難題があり、ジャック・マーのミッション・リーダーシップの真価や本気度が問われるところなのだ。
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