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アリババ「米中欧日に次ぐ経済圏を構築する」大戦略とは何か
いうまでもなくアリババにとっては、アプリは顧客にまつわるビッグデータを収集するためのチャネルでもある。購買履歴にモバイル決済情報、そしてアマゾンが包括的にはまだ手にしていないリアルタイムの位置情報まで収集しているのである。
その結果、アリババは、ビッグデータから個々人の「社会的信用度」を算出するサービスまで生み出している。これは「芝麻信用」というサービスで、個人の信用が可視化されるため、ポイントが高い人は、融資の審査や、お見合いサービスなど、各種のサービスで優遇される。いわばビッグデータによる人間の「格付け」をアリババは実現してしまったのである。
「身分特質(身分や信用の状況)」「履約能力(取引履行の履歴)」「信用歴史(クレジットヒストリー)」「人脈関係(交友関係)」「行為偏好(消費性向)」の5項目をもとに、総合スコアを算出して行われる個人版格付けである。公共料金の支払いを遅延したり、予約した配車アプリをキャンセルしたりすると点数が減額される。その一方で、点数が上がると携帯通話料後払いの許容や航空券の優先購入が可能になるなど、メリットも大きい。
さらには、ルクセンブルクなど欧州で従来中国人がビザを取得するのが困難だった国々のビザ取得にも同格付けの点数が活用されている。最近では地方政府との信用情報の連結も推進されてきている。
ブロックチェーンを使った流通管理システムの構築に着手
ブロックチェーンの取り組みも、アリババは急いでいる。筆者の見るところ、アリババが先進国に本格的に進出できるかどうかのカギはここにある。
ブロックチェーンといえば、仮想通貨ビットコインに使われていることで知られるが、今、これを一般的な金融取引やその他さまざまな分野の取引に活用しようという動きが盛んだ。ブロックチェーンの主な特徴は、同一のデータを分散して保持、共有すること、そしてチェーンのように過去のデータの後に新たなデータを重ねて記録できることにある。
この特徴を活かせば、食品の流通経路を追跡し、食品偽装を食い止められるということで、アリババはプライスウォーターハウスクーパース(PwC)と豪州企業とともに、ブロックチェーン流通管理システムの構築に着手している。
アリババグループの金融部門アント・フィナンシャルのエリック・ジンCEOは「ブロックチェーンを活用してアリババは世界に進出し、10年間で20億人の利用者獲得を目指す」と発言している。その背後には、今のままの「中国ブランド」の信用力では先進国に受け入れられるのは難しいという危機意識が見え隠れしている。そこは筆者も同感だ。
しかし裏を返せば、アリババの目論見通りに安心・安全な流通管理システムが構築できれば、さらには信頼性が高いブロックチェーンによる新たな決済システムを広めていくことができれば、一気に世界進出が進む可能性が高いともいえるのではないだろうか。
なお、現在は主に中国人インバウンド向けのアリペイは、来春には日本人向けサービスを始めると発表している。日本人向けの新たなサービスは中国の銀行に口座を持たなくても利用でき、日本国内外のアリペイ加盟店でアリババの決済サービスが使えるようになるのだ。
アリペイは来年にも米国に本格進出し、数百万店舗で利用可能になるとも報道されている。中国人旅行者のお金を取り込もうと、米国でも大手ホテルチェーン、大手小売りチェーン、グルメサイトなどが積極的にアリペイを導入しようと躍起になっている。2018年は、日本でも、さらには米国でもアリババの名が轟く年になるかもしれない。
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