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決断が日本より早い中国、でも「プチ大躍進」が悲劇を生んでいる
北京市では他にも、どうしようもないプチ大躍進が繰り広げられている。「スラム再開発」と「看板取り壊し」だ。前者は都市再開発の名を借りて、低所得者が住む地域の取り壊しを強行したこと。中国のネットには政府関係者がハンマーで低所得者が住む街をぶっ壊す恐ろしい動画が公開され、人々の怒りに火を着けた。
後者は北京市では一般的だったビル上部の看板を取り壊させるというもの。美化といえば真っ当な話のように思えるが、人々が目印としていたランドマークが一夜にしてなくなるのだから大混乱だ。
天然ガスへの転換も、スラム再開発も、そして看板取り壊しも、世論の猛烈な批判を浴びてストップした。明らかに間違っているとはいえ、一度始めた政策を途中でやめたのだから融通がきくようになったと褒めるべきか、それとも21世紀の今になってなおプチ大躍進を繰り返してしまう悪弊を批判するべきか。
日中のちょうど中間あたりに理想があるはず
民主主義の日本はとかく決定が遅い。その間に中国は先へ先へと進んで行ってしまう。日本の遅さにはうんざりするが、その一方で軽やかに前進する中国はどうしようもない失敗を犯してしまうという問題があるのも事実だ。
日中のちょうど中間あたりに理想があるはずと思うのだが、その塩梅を見極めるのが難しい。今こそ私、李小牧のように日中両国を熟知している人間が必要とされるだろう。
さて、政府による頭ごなしの改革には他にも弊害がある。私は北京で1泊した後、故郷である湖南省に飛んでそのことを痛感した。
湖南省は長江以南、すなわち冬でも「暖気」がない地域だ。冬のPM2.5とは無縁の世界だったはずなのだが、なんとどんよりと曇っているではないか!
中国北部、北京の空気をきれいにするという大号令が掛けられれば、ボイラーの改造だけでなく、汚染企業には操業停止や移転が命じられる。彼らは空気がきれいな中国南部へと移転したのだろう。
実は昨冬も中国南部で深刻な大気汚染が観測され、話題となっていた。香港や広東省などの最南部でも灰色の空が出現したのだ。中国政府が汚染対策の成果を誇らしげに発表する中で、南部に異例の汚染が観測された。両者の関係を疑う人は多い。きれいに掃除したように見せかけて、実は自宅前のゴミを隣家の前に移動するだけだったのではないか、と。
北京の青空の犠牲となって、わが故郷はどんよりとした灰色の空に覆われることになってしまった。自分の家のゴミを全部、隣の家の庭に投げ込むような汚染対策である。
北京では使わずに済んだマスクだが、私は捨てずに取っておいた。それが無駄にならなかったようだ。こうして私は湖南省で初めてマスクをつけることになったのだった。
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