コラム

200万人の中国人が感動した熊本地震のウェブ動画

2016年06月06日(月)16時06分

二更-v.qq.com

<3回の熊本取材の成果は、中国ではテレビよりも影響力がある自媒体(セルフメディア)で配信し、視聴者から「胸が痛んだ」「感動した」と多くの共感を得た。だがスマホであろうともちろん検閲はあり、今回も「敏感」判断と戦う羽目になって......>

 皆さん、こんにちは。「熊本案内人」の李小牧です。

 4月28日のコラム「熊本地震に寄せられた中国人の温かい言葉(とお金)」でお伝えしたが(コラムで「熊本案内人」を名乗るのもこれで2回目だ)、結局、4月中旬から5月初頭まで3回にわたり熊本地震の被災地を訪れた。被災地の状況をちゃんと伝えることが大切だと考えるからだ。実際、私のSNSを見た多くの中国人から義援金をいただいた。もちろんネコババすることなく(笑)、被災地に寄付してきた。

 最後に訪問したのは5月5日。朝5時のニュース番組を見ると、この日からくまモンの活動が再開するというではないか。東京にいたが、ぜひメッセージをもらいたいと即座に熊本へ向かった。くまモンはいわば「中国で一番人気の日本有名人」だ。「熊本は元気になる、また旅行に来て下さい」という彼(?)のメッセージがどうしても欲しかった。

【参考記事】中国は反日? 台湾は親日? 熊本地震から考える七面倒くさい話

 計3回の訪問は逐次SNSで発信してきたが、取材をまとめた3本の動画が完成したのでご紹介したい。日本語の字幕も付いているし、日本語音声の部分も多いので、中国語がわからない方でも内容はわかるはずだ。

「爱在劫后重生(愛は地震で生まれ変わる)」

「守望生命(命を見守る)」

「希望之光(希望の光)」

 視聴者の多くは凄まじい被害に胸を傷め、それでも復興のために雄々しく立ち向かう日本人の姿に感動している。また避難所生活でルールを守る姿、ご老人や子どもを優先して保護する光景に感嘆していた。

「二更」が日本支社を設立した理由

 この動画を発表したのは「二更」という自媒体(セルフメディア)で、テンセントビデオや優酷といった大手の動画配信サイトや、あるいは微信(ウィーチャット)などのSNSで、毎晩ショート・ビデオやコラムを更新している。自媒体という言葉はもともと個人のブロガーや配信者(中国版ユーチューバー)を指す言葉だが、最近では企業が自媒体を運営するケースも増えている。二更は今年3月に約5000万元(約8億4000万円)のベンチャー融資を受けたが、その時点での動画再生回数は累計で7億回を超えていた。二更以外にも「一条」など同様の自媒体が存在する。

【参考記事】4.3億回、中国人に再生された日本人クリエイター

 私が取材した熊本地震のドキュメンタリーも、6月4日現在、秒拍の放送回数だけで140万回を超えている。テンセント、優酷、土豆、愛奇芸など多くのサイトで配信しているので、全体では200万人の中国人視聴者が熊本地震被災地の状況を目にしたことになる。もはやテレビに劣らぬ影響力を持つといっても過言ではない。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story