- HOME
- コラム
- モビリティのこれから
- 「EV後進国」日本の潮目を変えた新型軽EV 地方で…
「EV後進国」日本の潮目を変えた新型軽EV 地方で売れる理由は?
軽自動車は日本の新車販売台数の約4割に上り、特に1人1台の所有が一般的な地方都市で重宝されている。EVはマンションやアパートなど集合住宅在住者にとっては使いづらいものとされているが、一軒家に住むドライバーには大きな問題ではない。自宅で充電が可能な200Vの普通充電器の設置工事は5万円程度でできる。
電池残量ゼロの状態から満充電にするのに約8時間、これで180kmの走行が可能になる。1日20km未満の走行距離の人が多いことを考えれば、1回の充電で1週間走らせることもできる。
1kWhで9km走るeKクロスEVの電気代を30円/kWh、1Lで19.2km走るeKクロスターボの燃料代を170円/Lで試算した場合、1kmあたりの燃料(電気)代はeKクロスEVが約3.3円/km、eKクロスターボは約8.9円/kmとなる。差額は約5.6円で、EVの方が安い。
EVは蓄電池としても使うことができるため災害時の備えにもなる。多くの人が給電できるEVやHVに乗っていれば、災害時に強い地域ができる。電気の地産地消による地域経済の活性化の動きにも注目していきたい。
他の軽自動車と変わらない価格帯
しかし、なぜこのタイミングで軽自動車のEVを販売することになったのか。
三菱自動車は2009年に軽自動車EV「アイ・ミーブ」を発売し、その後も軽バンタイプの「ミニキャブ・ミーブ バン」、軽トラタイプの「ミニキャブ・ミーブ トラック」を販売してきた。国内ではSUVなどの大きなクルマはプラグインハイブリッド(PHEV)、軽自動車のような小型車はバッテリーEVが当面の最適解と考え、今回の新型軽EV発売に至ったという。
手ごろな価格で販売され、インフラ整備の後押しもあり、消費者が一般的な軽自動車と同じ感覚で購入できるようになってきている。
アイ・ミーブ発表時の車両本体価格は459.9万円(税込)だった。補助金139万円が交付されても、実質購入金が320.9万円からと高額だった。一方、eKクロスEVは239.8万~293.26万円(税込)で、クリーンエネルギー自動車導入促進補助金を使えば184.8万円(税込)と、他の軽自動車と変わらない価格帯で購入することができる。(日産サクラの車両価格は233.3万円~294万円)
またゼンリンによると、充電器数(急速充電器と普通充電器の数)は2013年3月末時点では7366基だったが、21年3月末時点では29233基とインフラ整備が進んでいる。出先での充電の不安も着実に減ってきているようだ。
三菱のアイ・ミーブは世界初の量産EVとして発売され、新しいものに興味関心の高い層に支持された。一方、eKクロスEVは補助金を利用すると手ごろな価格で購入でき、充電環境も拡大してきたことから、約1カ月半で4500台以上を受注した。これは、過去の他のEVのときには見られなかった反応だ。
この筆者のコラム
災害対策、事故予防に 気象データの活用がモビリティ分野にもたらすメリット 2022.11.04
学校の統廃合が地域の移動課題解決のカギとなる理由 2022.09.28
担い手不足解消へ ローカル線の低コスト自動運転とBRT化で変わる地方の移動 2022.08.30
「EV後進国」日本の潮目を変えた新型軽EV 地方で売れる理由は? 2022.07.19
改正道路交通法は高齢者の免許更新をどう変える? 「サポカー限定免許」より必要なこと 2022.06.15
知床遊覧船沈没事故から考える、名ばかりの安全対策を見直す道 2022.05.20
教育DXで変わる通学路の安全対策 2022.04.18