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路線バスに代わるAIデマンド交通は、ラストマイル対策の最適解か
日本では、2016年7月に設立した公立はこだて未来大学発のベンチャー企業「未来シェア」がAIデマンド交通のシステム「Smart Access Vehicle Service(略称:SAVS、サブス)」を提供し始めてから、日本全国で導入が検討されるようになった。山形県天童市、熊本市、静岡県下田市、三重県亀山市、岐阜県多治見市などさまざまな地域で実証実験が行われている。
AIを活用したデマンド交通が登場した時期に、MaaS(Mobility as a Service)が注目されたため、MaaSと言えばAIデマンド交通を連想する人も多いだろう。
AIデマンド交通が登場し始めた頃は、すべてをスマートフォンのアプリ上で行うサービスが検討された。しかし、多くの地域としては、クルマの運転ができない高齢者向けのサービスとして検討しており、スマートフォンが操作できない高齢者が取り残される、利用者が伸びない、中山間地域などの人口密度の低い地域では持続可能なモデルがつくれない、などが今でも問題となっている。
AIデマンド交通をうまく使いこなす伊那市
このようななか、伊那市の事例は興味深い。伊那市は長野県の南部に位置する。南アルプスと中央アルプスの2つのアルプスに抱かれ、天竜川と三峰川の流れる自然豊かな街であるが、2006年に旧伊那市、旧高遠町、旧長谷村が合併したため面積は667.93平方キロメートル、人口は66,642人で(横浜市437.78平方キロメートル、人口3,776,179人)と、広大で人口密度も低い中山間地域だ。
例に漏れず伊那市でも路線バスを入れていたが、乗車率が悪かった。その理由を調べると、バスの本数が少ない、バス停までが遠い、自家用車を運転するからだった。
伊那市ではAIデマンド交通の導入前に、自動運転の実証実験を行っていた。伊那市の自動運転実証実験の協議会会長を務めた名古屋大学の金森亮特任准教授から、民間事業者との議論の必要性や需要、それに最適なシステムとしてSAVSの話を聞いていた。自動運転は技術コスト面から導入は時期尚早との判断から、自宅から目的地までドアツードアで乗り合わせる新しい公共交通としてAIを導入したデマンド交通に至ったのだそうだ。
伊那市のAIデマンド交通の名称は「ぐるっとタクシー(ドアツードア乗合タクシー)」だ。2020年4月に西春近地区から始まり(台数4台、1乗車につき500円)、2021年10月から市内ほぼ全域を運行エリアにした(6エリア、12台、1乗車につき500円)。
ぐるっとタクシーの2021年4月1日から9月21日までの乗合率は、4月が28.6%、5月が29.8%、6月が30%、7月が32.8%、8月が36.8%、9月が35.6%とコロナ禍であったが、安定して推移している。
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