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「自動運転があらゆる移動課題を解決する」という期待への違和感
道路インフラに手を入れようとすると途方もない費用がかかるため、車両をできるだけ高度化して自動運転レベル4や5を推進していこうというのが日本の方向性だ。しかし、車両の技術や価格を考えると、信号のインフラ協調のみならず、地域全体の車速を下げたり、利用する地域を選定するなど、道路環境もそれなりに整える必要があると感じている。
必要なのは「計画」
確かに自動運転サービスが実現すれば、多くの移動課題を解決してくれる万能薬となるだろう。
しかし公共交通やモビリティサービスを取材してきた視点から見ると、社会的に最も期待されている高齢者の足の確保や寝ていても移動できる自動運転がサービスとして提供されるためには、あらゆる先端企業や交通事業者、大学、行政の協働と地域住民の理解が不可欠だと分析している。
自動運転車が走る時代について日本で議論する際、自動運転がドアツードアで提供されて移動問題が解決されるという空気が支配的だ。徒歩、自転車、パーソナルモビリティ、公共交通、そして自動車の役割を改めて確認することがおろそかにされていると感じる。
数年内に万能薬として実用化させるためには、都市計画、交通計画、持続可能な都市経営の議論を今以上に活発にしていく必要がある。
また新型コロナウイルスの流行により自宅で仕事する人が増え、GIGAスクールなど教育現場でのデジタル活用が進んだ。通勤などに代表される義務的な移動は減っていくだろう。
人が集まり形成される都市の役割とはこれからどうあるべきか、農山村など密度の低い地域経営はどう維持していくのか、そして人の移動そのものをどう捉えていけばいいのか。ドライバーのいない車両を導入する前に、そんな根本的な議論と計画が必要なのではないだろうか。
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