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弱体化が続く町内会・自治会と地域防犯の切っても切れない関係
総務省が実施した「地域運営組織」に関する調査によると、おおむね7割が任意団体としての町内会に、1割がNPO法人としての町内会によって運営されているようだ。
いずれにしても、町内会は「地縁型住民組織」であるため、包括機能的・地域独占的なボランティア活動を展開している。この点で、「志縁型市民組織」としてのNPOが中心となり、個別機能的・分野専門的なボランティア活動を展開している欧米諸国とは大きく異なる。
それはともかく、町内会が担っている広範な役割の中で、最も重要なものの一つが防犯である。防犯協会という別の名称で呼ばれることもあるが、その実体は町内会だ。防犯協会の歴史は古く、豊臣秀吉の「御掟」にまで遡るという。これを継承したのが江戸幕府の「五人組」で、5戸ずつを組み合わせ、住民に相互監視と連帯責任を負わせた。太平洋戦争後も、GHQの命令により、いったんは解散を余儀なくされたが、その後も「赤十字奉仕団」などという名称で防犯活動を続け、最終的にはGHQから特別許可を得ている。
このような歴史を見ると、町内会による防犯はセミフォーマル・コントロールと言えそうだが、実際は専門性が低いので、インフォーマル・コントロールになっている。なぜなら、防犯の基礎である「犯罪機会論」を知らずに活動しているからだ。
本来であれば、欧米のように、専門性の高い防犯NPOがセミフォーマル・コントロールを担うのが望ましい。しかし、日本では防犯NPOが成熟していない。そのため、当面は町内会にセミフォーマル・コントロールを期待せざるを得ない。もちろん、その前提として、「犯罪機会論」を普及させることが必要だ。
人の動機ではなく、犯行の機会(チャンス)をなくそうとする「犯罪機会論」では、犯罪が起きやすいのは「入りやすく見えにくい場所」であることが、すでに分かっている。「入りやすい場所」とは、怪しまれずに標的に近づけて、すぐに出られる(逃げられる)場所で、「見えにくい場所」とは、犯行が目撃されにくく、捕まりそうにない場所だ。
物理的に「入りにくく見えやすい地域」にする方法
反対に「入りにくく見えやすい場所」では、犯罪者は犯行をあきらめる。したがって、そうした改善を施すことが必要であり、それには、個人で行うミクロの対策と、集団で行うマクロの対策がある。
これを地域の安全に当てはめると、ミクロの対策が「入りにくく見えやすい家」にすることで、マクロの対策が「入りにくく見えやすい地域」にすることになる。こうした二段階の対策は、犯罪者の行動に適合している。というのは、例えば、空き巣は、まずマクロ的にターゲットとなる地域を選び、その後に、ミクロ的に特定の家をターゲットにするからだ。
町内会が担うのは、もちろんマクロの対策だ。では、具体的に何をどう進めたらいいのか。
物理的に「入りにくく見えやすい地域」にする方法として、欧米で多用されているのは、ハンプと監視カメラだ。このうち、ハンプとは、車の減速を促す路面の凸部(盛り上がり)のこと。幹線道路から生活道路に入る場所にハンプを設けておけば、ひったくり、空き巣、誘拐犯などが犯行後に全速力で幹線道路に逃げられない。つまり、「入りにくい(逃げにくい)場所」として、犯罪がやりにくい場所になる。
イギリスでは、「DIYストリート」という草の根プロジェクトで、住民によるハンプ設置が認められている。日本でも、2001年の道路構造令の改正によりハンプの設置が認められたが、普及は進んでいない。
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