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「危ない人」は無理でも「危ない場所」なら対策できる──地域安全マップで身に付く防犯知識
社会から何の反応もないまま、地域安全マップの誕生から2年が過ぎた。
ターニングポイントは、突然訪れた。それは、04年に開かれた、沖縄県の「ちゅらうちなー安全なまちづくり条例」の施行記念講演会だった。筆者は、いつものように、講演で地域安全マップを提案した。すると、講演終了後、沖縄県警察本部長(後の警視総監・高橋清孝氏)が、「地域安全マップはいいですね。学生も呼んで、全国初を沖縄でやりましょうよ」と話しかけてきた。しかし、それまでずっと、地域安全マップを講演でアピールしても、リップサービスが返ってくるだけだったので、今回の話も半信半疑だった。警察本部長も、「実現できるか分からないから、学生にはまだ黙っていてください」と付け足していた。
しかし、警察本部長は、地域安全マップを、「ちゅらうちなー安全なまちづくり推進会議」(会長・沖縄県知事)に提案し、その採用が決まった。こうして、最初の地域安全マップのプロジェクトが、沖縄県の小学校で実現した。ゼミの大学生20名が、沖縄県の旅費負担で県下10カ所の小学校を訪れ、地域安全マップづくりを指導した(写真)。
小学校の教科書にも
こうして、地域安全マップの普及活動が始まった。そのかいあって、内閣総理大臣が主宰し、全閣僚を構成員とする犯罪対策閣僚会議の『犯罪に強い社会の実現のための行動計画』にも、「危険を予測する能力を高めるとともに、地域の連帯感を強めるため、地域安全マップの更なる普及を図る」という文章が盛り込まれた。その後、小学校の教科書でも、犯罪機会論や地域安全マップが取り上げられるようになった。
07年には筆者の教え子たちにより、NPO法人「地域安全マップ協会」が設立された。
学術分野でも、福山大学の平伸二教授、北陸大学の山本啓一教授、九州国際大学の姜信一教授、香川大学の大久保智生准教授、北九州市立大学の村江史年准教授、上越教育大学の蜂須賀洋一准教授など強力な推進者が現れた。
また国際的にも、11年、アジア犯罪学会の機関誌に、地域安全マップに関する査読付き論文が掲載された。
新型コロナが流行してからは、Googleストリートビューを用いたフィールドワーク・シミュレーションの手法が加わり、オンライン方式で「地域安全マップ教室」が開催されている(写真)。
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