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園児バス置き去り死とその報道に見る、「注意不足」のせいにする危うさ
乗降中の通学通園バスを後続車が追い越したり、対向車がバスとすれ違ったりする際の安全確保についても、「精神論」対「機会論」という構図が見られる。
日本では「徐行して安全を確認する」(道路交通法)だけでよいが、アメリカやカナダでは、後続車や対向車は停車しなければならない。つまり、日本では「注意するから大丈夫」(原因論)だが、アメリカやカナダでは「注意力は当てにならない」(機会論)なのである。
このように、日本人の多くは、「人」に注目する「犯罪原因論」にどっぷりつかっていて、「場所(景色)」に注目する「犯罪機会論」を知らない。そのため、防げたはずの事故や事件を防げていない。
「人がトラブルに巻き込まれるのは知らないからではない。知っていると思い込んでいるからである」
アメリカの作家マーク・トウェインは、そう語ったと伝えられているが、事故や事件についても同じことが言える。
事故や事件が発生しても、それは偶然であって、運が悪かったと考えるのが日本人の常識である。しかし、そのほとんどは、事故や事件の発生確率が高い状況で起こっている。言い換えれば、確率の高低さえ分かっていれば、防げたはずの事故や事件ばかりなのである。
日本の常識は世界の非常識
現代のような情報社会にあっては、事故や事件に関する情報は満ちあふれている。そのため人々は、事故や事件について知っていると思い込んでいる。事故や事件が起これば、そこかしこで、そのコメントが飛び交うものの、日本の常識は世界の非常識であることが多い。例えば、次のうち、知っているのはいくつあるだろうか。
1 事故や事件は、「入りやすく見えにくい場所」で起こりやすい(犯罪機会論)。いじめや労働災害も「入りやすく見えにくい場所」で起きやすい。インターネットやSNSで犯罪に巻き込まれるのは、そこが「入りやすく見えにくい場所」だからだ。
2 日本では、「不審者」という言葉が普通に使われている(犯罪原因論)。しかし海外では、この言葉は使われていない。そのため、学校でも「不審者に気をつけて」と子どもたちに教えたりはしない。教えているのは、「危険な状況」や「だまされない方法」だ(犯罪機会論)。
3 日本では、防犯ブザーを渡し、「大声で助けを呼べ」「走って逃げろ」と指導している(犯罪原因論)。これらは犯罪発生後のことであり、襲われたらどうするかという「クライシス・マネジメント」である。しかし海外では、襲われないためにはどうするかという「リスク・マネジメント」が主流だ(犯罪機会論)。
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